このたび,石油学会の会長を拝命いたしました日揮株式会社の山口でございます。微力ではありますが,学会発展のために努めてまいる所存ですので,よろしくお願いいたします。会長就任にあたりましてご挨拶申し上げます。
新型コロナウイルス感染症の影響も小さくなり,以前の活気あふれる学会の活動を取り戻しつつあります。その一方で,今年元日の能登半島地震などのように,自然災害も多く発生しており,被害に遭われた皆さまに心よりお見舞い申し上げますとともに,災害復旧に奮闘されている方々に感謝を申し上げます。
さて,2019年欧州委員会が「欧州グリーンディール」を発表,そして2020年菅前内閣総理大臣による「2050年カーボンニュートラル(CN)宣言」が行われ,環境対策とともに経済発展を果たそうとの機運が起こりました。加えて,2022年ロシアのウクライナ侵攻によりエネルギーの安定供給も重要視されることになりました。
村松淳司前会長は,2050年CN社会を実現するためには,ゴールとなるCN社会像を描くとともにCN社会にどのようにして移行させていくのか指針を示していくことが大変重要であると述べられました。
ゴールとなるCN社会は,再生可能エネルギー(電力)を最大限利用する社会と想定されますが,すべてのエネルギーを電力で賄うことはできません。石油はエネルギー密度が高く,これからも輸送用燃料として,また化学品製造のための炭素資源としても欠かすことができません。そのためにもCN化された石油(炭化水素)を開発し供給体制を整えることが重要です。さらに,CN社会に移行するまでの間,エネルギーの安定供給,CN社会との共存のための石油資源開発,石油精製や石油化学の設備の有効活用,維持管理も重要となります。
1973年の石油危機以降,石油学会においても,資源開発,エネルギー製造,エネルギー変換・利用,化学品製造の各分野で技術は蓄積されてきましたが,その組み合わせだけでは経済的に満足したCN社会達成をすることはできません。さらなる技術の進展,革新が必要となっています。
CN社会とそれまでの移行プロセスを描いていくためには,石油学会により確度の高い多くの情報が集まること,その情報をもとにCN社会実現に向けた議論ができること,そして議論した内容を情報として発信できることが必要と感じています。幸い石油学会にはこれまでも産・学・官から多くの方々にご参加,ご協力をいただきました。これまでの関係者の皆さまのご努力に敬意を表しつつ,これからも石油学会の活動により幅広く,より多くの方にご参加いただけることを願っております。
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