石油学会会長メッセージ

松方正彦

松方正彦
(早稲田大学 先進理工学研究科 教授)

 このたび石油学会会長を拝命いたしました。長い歴史と伝統を有し,わが国のエネルギー,燃料,化学産業を科学と技術の面から支えてきた本学会の運営を担うこととなり,その責任の重さを強く感じております。会員の皆さまのご支援とご協力を賜りながら,石油学会のさらなる発展に微力を尽くしてまいります。
 現在の中東情勢を背景として,石油およびナフサの安定供給に改めて大きな注目が集まっています。石油は燃料として社会を支えるだけでなく,ナフサを通じてエチレン,プロピレン,芳香族化合物などの基礎化学品を生み出し,プラスチック,繊維,ゴム,洗剤,医薬品,電子材料など,私たちの生活と産業を広く支える出発原料でもあります。今回の事態は,石油およびナフサに関わる技術と研究開発が,平時には見えにくい形で社会基盤を支えていることを,改めて浮き彫りにしました。
 石油学会はこれまで,石油の探鉱・開発・生産から,石油精製,石油化学,触媒,分析,装置,プロセス,製品利用に至るまで,石油に関わる幅広い科学と技術を基盤として活動してまいりました。とりわけ部会活動では,現場に密着した技術課題について情報を共有し,企業,大学,研究機関の技術者・研究者が交流する貴重な場を提供してきました。今後,原油の性状や調達先の多様化,さらにはバイオマス,廃プラスチック,合成燃料など原料の多様化が進むとすれば,現場に根差した技術をさらに磨き,知見を蓄積し,次世代へ継承していくことの重要性は一層高まるものと考えます。
 カーボンニュートラルの実現,資源循環型社会の構築,エネルギーとモノづくりの自律性の確保は,気候変動対策であると同時に,わが国の経済安全保障に直結する重要な課題です。炭素資源をいかに賢く使い,循環させ,必要なエネルギーと素材を安定的に供給するか。そのための科学と技術を議論し,発信することこそ,これからの石油学会に求められる役割であると考えます。
 昨年度は山口康春前会長のもと,循環型社会構築に向けたビジョンが取りまとめられ,それに基づく新たな部会組織と活動が進められてきました。この流れをさらに発展させ,石油精製・石油化学を中核とする現業への支援と,カーボンニュートラル・資源循環を見据えた将来ビジョンの提示を,いわば車の両輪として進めてまいります。そこに,これからの時代にふさわしい新しい石油学会の姿があると考えています。
 また,各支部の活動は,地域に根差した草の根の学会活動として極めて重要です。若手技術者・研究者の育成,地域産業との連携,会員相互の交流を活性化するうえで,支部活動は学会の基盤そのものです。本部,部会,支部が相互に連携し,会員1人ひとりが参加する意義を実感できる学会運営を進めてまいります。
 学会が目指すテーマは「サステナブルな石油学会の構築」です。石油産業を持続可能にするという意味にとどまらず,石油学会自体が,産業,社会,若い世代から必要とされ続ける学会であるために,活動の内容と形を不断に進化させていくという意味を込めています。現場を支え,未来を構想し,社会に発信する学会として,会員の皆さまとともに新しい一歩を踏み出してまいりたいと思います。

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