石油学会会長メッセージ

村松淳司

村松淳司
(東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センター センター長・教授)


 このたび石油学会の会長の大役を仰せつかることとなりました。もとより微力ではありますが,学会の発展のために全力を尽くす所存ですので,何卒よろしくお願いいたします。
 新型コロナウイルス感染症のパンデミックが収拾される見込みもないなかで,ロシアのウクライナ侵攻から始まった歴史的な転換期に今まさに直面しています。この激動の時代の中で,石油が人々の普段の生活に果たす役割は依然として重要で,大きな影響力を有しています。
 エネルギーミックスの中で石油の用途については,発電用や家庭用などに比べると,化学用原料,自動車における絶対消費量は,この20年は多少減少したものの,大きな変化はなく,天然ガス,石炭を含めた化石エネルギーが,一次エネルギー供給量のほとんどを占めている状況に変わりはありません。一方,昨年10月22日には「第6次エネルギー基本計画」が発表され,2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みを入れながら,脱化石資源を見据え,水素やアンモニアの利用など,新しい技術を積極的に採り入れた構成になっています。電源構成だけとって言えば,石油類への依存は2 %程度に抑えることとなっていて,もちろん,石油火力発電からの全転換を見据えています。
 カーボンニュートラル,そしてカーボンゼロを目指すとき,家庭用や化学原料用も含めて,石油消費プロセスの中でのさらなる省エネルギー化の推進,CO2転化技術を含めた有効利用手法の開発など,ますます石油に深く関わる新技術の創成,研究開発が最重要課題であることが明確になってきています。
 石油学会は,石油や石油化学に関わる技術者,研究者が集まり,情報交換し,そして共同研究や産・官・学連携などを推進する,アカデミアと企業人が交わる重要な場として,その意義が変わることはありません。また,石油・天然ガス資源調達先の国々との多面的な関係構築の形成を進め,石油・天然ガスを取り巻く情勢の理解を積極的に深め,産・官・学が連携して国際的な協力をますます進展させる必要があります。石油学会の主要な役割として,それらの国々との人材交流や研究情報共有,ならびに相互理解につながる技術情報交換のための交流の舞台提供があり,これらを将来的に継続していく必要があります。
 さらに,今後はカーボンニュートラルを目標とするわが国の中で,石油を知り尽くす専門家集団として,特に学会外へ石油に関わる情報発信や資料提供などを,積極的に推進していく必要があります。
 すなわち,石油に関わる技術・研究・教育の重要な役割を担っていくことになるものと思いますので,会員の皆さまの継続的なご支援,ご協力を,何卒よろしくお願いいたします。

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