第25回絶縁油分科会研究発表会

日時:2005年6月3日(金)9:40〜16:30
場所:京都市勧業館「みやこめっせ」
  (京都市左京区岡崎成勝寺町9-1 電話075-762-2630)
懇親会:6月3日(金)16:30〜18:00 (於:レストランめっせ(同館内))

司会:西山 彰一(日本AEパワーシステムズ(株))

開会の辞(9:40〜9:50)

絶縁油分科会委員長 土江 基夫

 

(研究発表)

1.コンデンサ用絶縁油の特性と機器への影響(9:50〜10:15)

日新電機(株)  神庭 勝

 電力コンデンサ用絶縁油としては、世界的にはいくつかの芳香族系絶縁油があり、 それらは何れもJIS5種油に属しているが、組成的には若干異なったものとなっている。 この組成の差が絶縁油の特性、ポリプロピレンフィルムとの相互作用、コンデンサの特性へどのような影響を与えるのか、 他の絶縁油とも対比しながら検討を行った結果について述べる。

2.絶縁油中の芳香族化合物の特性に及ぼす影響(10:15〜10:40)

三菱電機(株)  土江 基夫

 近年、絶縁油中の多環芳香族の含有量規制などで、芳香族化合物が減少する傾向が見られる。 芳香族化合物は、絶縁油の水素ガス吸収性、飽和水分量や劣化などに影響を及ぼすことが知られている。 ここでは、過去に行った絶縁油の特性試験結果と最近の絶縁油の試験結果を比較することにより、 芳香族化合物の果たす役割について検討する。

3.空気雰囲気下における絶縁物の劣化挙動(10:40〜11:05)

愛知電機(株)  宮島 極

 従来より、平均重合度とフルフラール生成量の相関関係を適用して変圧器の劣化診断が行われている。 空気雰囲気下で絶縁物の加熱劣化試験を行ったところ、平均重合度とフルフラール生成量は相関性を示さなかった。 この関係を適用して劣化診断が可能であるのは、空気と遮断された密封式であり、 開放式には適用できない可能性があることが示唆された。

 

司会:神庭 勝(日新電機(株))

(特別講演)

4.微生物による油分解の環境的意義(11:05〜12:05)

神戸大学  永田 進一

 石油は、主として炭化水素化合物からなるが、その他の有機化合物や有機金属類なども含む複雑な混合物である。 また、産地によって原油の種類は千差万別であり、組成や物性も互いに異なる。 原油に対する微生物の関わりとしては、微生物による変換、分解、油汚染修復などがある。ここでは、油の環境に対する影響を考慮し、 油分解に及ぼす因子の概説と油の化学構造から見た微生物分解の問題点と特徴を論じる。

 

休憩(12:05〜13:20)

司会:宮島 極(愛知電機(株))

5.電力機器用ナノコンポジット絶縁材料の開発(13:20〜14:20)

(株)東芝  清水 敏夫

 ナノオーダーの微細な粒子を樹脂中に少量分散することで、従来にない特性を引き出すことができる。 本報では、層状シリケートを熱硬化性樹脂に分散させ、電力機器応用を目的としたナノコンポジット絶縁材料を調整し、評価した。 ナノコンポジット化することにより、優れた耐熱性、機械的特性を示した。 また、絶縁特性にも優れ、絶縁破壊電圧の向上や耐放電寿命の増加等の効果が期待できる。

司会:栗原 二三夫((株)高岳製作所)

(研究発表)

6.油中微粒子測定による電力用変圧器劣化診断に関する検討(14:20〜14:45)

ユカインダストリーズ(株)  鈴木 敏夫

 絶縁紙セルロース繊維の半価幅と絶縁紙平均重合度との間に相関関係があることから、 油中の単繊維の半価幅測定による変圧器の劣化診断技術の構築に関して過去3回発表した。 その後、複数の装置にて絶縁紙およびセルロース繊維の半価幅を測定し、半価幅と平均重合度との関係について再試験を行った結果、 半価幅と平均重合度との間に相関関係はあるものの、測定系により半価幅の違いがあること、 単繊維での半価幅の測定はできないなどが判明した。調査結果の概略を報告する。

7.環境調和型絶縁油の変圧器への適応性評価(14:45〜15:10)

(株)かんでんエンジニアリング  高本 清

 欧米では、以前から環境に優しい潤滑油が開発され、使用されている。 国内では、最近開発されエコマーク商品として市販されるようになった。 (株)かんでんエンジニアリングでは、植物油をエステル化し絶縁油として商品化を行っているが、植物油を直接絶縁油として仕上げ、 物理、化学、電気特性と長期安定試験を行い変圧器絶縁油としての適応性評価を行った結果を報告する。

 

休憩(15:10〜15:20)

 

8.絶縁油中PCB分析における自動前処理について(15:20〜15:45)

ジーエルサイエンス(株)  重黒木 明

 高速液体クロマトグラフィー用化学結合型シリカゲルカラムを用いた、 カラムスイッチングシステムによる絶縁油中PCBs分析のための自動前処理システムを開発した。 本クリーンアップ法を用いることにより、絶縁油中のPCBsを鉱油成分などの妨害を受けることなく、 四重極形質量分析計を用いて測定することが可能となった。 本システムによるクリーンアップ時間は20分程度であり、1時間に3検体の処理が可能となる。

9.絶縁油中PCBのイムノアッセイ(15:45〜16:10)

(財)電力中央研究所  大村 直也

 絶縁油中のPCBの簡易検出法として、抗原抗体反応を利用したイムノアッセイを提案し、 その検出原理などについて紹介するとともに、機器分析との比較も合わせて概説する。

検出原理などについて紹介するとともに、機器分析との比較も合わせて概説する。

10.IEC TC10 ポルトガル会議およびCigre SC D1パリ会議の報告(16:10〜16:25)

三菱電機(株)  土江 基夫

 IEC TC10では、絶縁液体関係のIEC規格を審議しており、CigreD1.01は、油浸絶縁についての検討を行っている。 Cigreで技術的な検討が終わったものが、IEC規格として検討されるケースがあり、両者には密接なつながりがある。 ここでは、TC10とCigreで今後取り組んでいく(1)変圧器の保守における危機管理、(2)絶縁紙の熱的な寿命評価、 (3)絶縁油中の溶解金属および金属性沈降物の分析、(4)生分解性の絶縁油などについて紹介する。

閉会の辞(16:25〜16:30)

絶縁油分科会幹事  高本 清

 

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