第23回絶縁油分科会研究発表会
日時:2003年6月13日(金)10:00〜16:05
場所:京都市勧業館「みやこめっせ」
(京都市左京区岡崎成勝寺町9-1 電話075-762-2630)
参加費:(予稿集含)石油学会普通会員・維持会員4,000円、非会員6,000円
懇親会:6月13日(金)16:30〜18:00 (於:未定)
司会:石垣 治久(明電舎)
開会の辞(10:00〜10:10)
絶縁油分科会委員長 石井 敏次
(研究発表)
1.油浸紙コンデンサの経年劣化について(10:10〜10:35)
日新電機(株) 神庭 勝電力用油浸紙コンデンサは使用年数が20年以上経過し、過温度上昇や絶縁破壊に至る例が散見されていると共に、運転中の機器においても油中ガス量の増加や定格運転中に部分放電が確認されている等、劣化が見られるようになった。これら劣化現象の再現とメカニズムの解明を行った結果、絶縁油成分のパラフィンが課電劣化反応により重縮合し、ワックスを生成、誘電体の損失増大や部分放電を発生させることが判った。詳細について報告する。
2.フルフラールの絶縁紙への吸着(第2報)(10:35〜11:00)
ユカインダストリーズ(株) 石川 和美
劣化生成物であるフルフラール量を用いた油入変圧器の現行の経年劣化度診断では、絶縁紙への吸着に対する考慮がなされていない。そこで、経年劣化度診断の精度向上を目的として、劣化生成物の絶縁紙に対する吸着特性を検討した。本報告では前回報告より温度水準を増やした実験を行い、フルフラールの絶縁紙への吸着の活性化エネルギーを求めたいと考える。
3.油中微粒子測定による変圧器劣化診断技術(第2報)(11:00〜11:25)
中部電力(株) 野田 隆昌
前報で化学的手法を用いた劣化度診断を補完するため、セルロース繊維の半価幅の値で平均重合度を測定する方法を検討した。今回は半価幅と平均重合度の検量線を作成するため、半価幅の最適な測定条件及び試料の作製方法について検討し、ばらつきを低減する最適条件を決定した。また、実変圧器油中のセルロース繊維の分布状況を調査した結果、油中に浮遊するセルロース繊維の半価幅の値に分布が見られることが判った。
4.酸化防止剤を添加した耐候性に優れた電気絶縁油の検討(11:25〜11:50)
出光興産(株) 手島 一裕
現在、国内では酸化防止剤入りの電気絶縁油はほとんど使用されていないが、海外では使用実績がある。今回ポールトランスに代表されるような小型変圧器に使用する電気絶縁油として、種々の基油を使用して酸化防止剤を添加し、耐候性に優れた長寿命電気絶縁油を検討したので紹介する。
休憩(11:50〜13:20)
司会:高橋 享(フジクラ)
(特別講演)
5.電気伝導への液体誘電体中の水クラスタ形成の効果(13:20〜14:20)
武蔵工業大学 曽禰 元隆
液体絶縁物中の水と電気伝導と密接な関係があることは古くから知られている。この20年間誘電体中の水分子の挙動は近赤・赤外スペクトルにより検討され、水分子が誘電体極性基に拘束されクラスタ水を構成していることが明らかとなってきた。これらクラスタ水は更に、A・B・C・Dクラスタ水に分類され、これらの拘束位置も明らかとなりつつある。そこでこれらのクラスタ水と電気伝導との関係を求め液体の電導機構を明らかにする。
休憩(14:20〜14:30)
司会:手島 一裕(出光興産)
(研究発表)
6.エポキシ樹脂の劣化挙動の考察(14:30〜14:55)
(株)明電舎 吉岡 靖弘
電気・電子分野で電気絶縁材料として多方面で利用されているエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂は、製品として高電界下での絶縁特性と機械特性を両立した高信頼性が要求されている。これらの劣化要因としては電圧・機械・熱・環境劣化が挙げられる。今回は、前回のモールド製品内部の歪挙動の報告に対する応力解析結果と熱劣化に対する劣化挙動の把握・検出を目的とした機器分析の適用を検討しているので報告する。
7.PCB混入絶縁油の無害化処理技術(14:55〜15:20)
(株)関西テック 金田 尚志
PCB特別措置法の施行に伴い、平成28年7月までに廃PCB及びPCB汚染物の適正処分が義務付けられた。廃PCBには不燃性コンデンサ等に充填された高濃度のPCBと絶縁油中の微量のPCBが混入したものがある。本発表では、低コストで微量PCB混入絶縁油を適正処理できる「カリウム・ターシャリー・ブトオキサイド(t-BuOK)法」について実証試験の結果及び処理後の絶縁油の性状等について報告する。
8.小型変圧器絶縁油保守管理基準調査専門委員会報告(15:20〜15:40)
(株)高岳製作所 栗原二三夫
小型変圧器では一般的に大型に比べ絶縁油劣化が大きく、小型変圧器絶縁油に対する保守管理基準設定への要望も各所で聞かれる。このような背景から本調査専門委員会では、変圧器メーカー・石油会社・分析機関のご協力により、小型変圧器絶縁油保守管理基準認定可否の調査・検討を実施している。この中で小型変圧器絶縁油保守の現状や管理基準の運用状況・要望に関するアンケートを実施した。本報告ではこの内容について述べる。
9.IEC TC10プラハ会議報告−絶縁油IEC規格の動向−(15:40〜16:00)
ユカインダストリーズ(株) 増田 雄彦
昨年9月末から2日間、チェコのプラハにおいてIEC TC10 の会議が開催された。今回は鉱油系絶縁油の規格、全酸価測定法、電気特性測定法などの基本的な規格の改正をはじめ、油中ガス分析診断ガイドの見直しなどの重要な条件が審議された。また今後改正が予定されている油中ガス分析試験法や絶縁油メンテナンスガイドの改正の途中経過なども論議された。これらの審議及びその後の文書を通してIEC 規格の動向を説明する。
閉会の辞(16:00〜16:05)
絶縁油分科会幹事 佐野 孝
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