平成12年度経営情報部会WG1活動成果報告

WG1 携帯端末の最新技術の動向調査−石油産業への適応可能性を探る

参加メンバー: 生田誠司(山武産業システム),岡 文一(東洋エンジニアリング),桜井国幸(日揮), 鮫田芳樹(横河電機),鳥海 孝(日石三菱),難波乗安(昭和シェル石油),平崎邦夫(横河電機), 森田佳幸(千代田化工建設)(以上,8名)

*メンバーの所属および下記成果報告書は2001年3月現在のものです。

1. はじめに

 最近のIT技術の進歩は目覚しいものがあり,半年後に市場に出ている製品群はもはや最新仕様の製品でないという状況である。このような状況下でも,常にITシステムの最適な開発と運用を勘案し,TCOの削減を目指しながら石油会社として業務効率を上げていかなければならない。その中でも特に技術進歩の激しい「携帯端末」とその周辺環境に焦点をあてて,どのように石油産業に応用できるか検討を行ったので,ここに報告する。ただし各種携帯端末製品調査結果などはページ数の関係で割愛させて頂く。

2. 携帯端末の定義

本WGにおける「携帯端末」は以下のとおりとした。

  1. ポケット・コンピュータ・サイズもしくはそれ以下のサイズのものに限り,ノート型パソコン類は含まない。
  2. 携帯インテリジェント端末またはWindows CE以下のOS搭載のPC(携帯電話,PHS,モバイル・ノートPC,ラップトップPC,PDA等の呼称では分類しない)
  3. OSは,Windows CE レベルもしくはそれ以下(パームOS,メーカー独自OS等)のOSを搭載している。
  4. ワイヤレス利用の機器(無線または赤外線等の伝送装置機能を有する端末機器)で,入力時点,または随時にイヤレス方式で画像,音声,データ送受信が可能な機能を持つ端末。無線による使用場所でのデータおよび音声の送受信が可能であること。または通信機器との接続が容易に可能であること。

3. 石油産業への適応分野と携帯端末利用可能性

3.1 本社業務(営業)

 石油元売会社の営業は,傘下特約店に対するコンサルティング営業が主であり,業務内容から勘案すると携帯端末ではなくモバイルPCの利用が中心になるだろう。利用機能は,メール送受信や数値・画像データ伝送,本社基幹システムへのログインとその端末としての利用,ダウンロードされた種々のデータ処理等が考えられるが,本社基幹システム接続のためにファイア・ウォールを中心としたセキュリティ・リモ―ト・アクセス装置群が必要になる(図1参照)。

当該機能利用の簡易版携帯PCとしてWindows CE搭載のポケットPCやPDAが利用可能と思われるが,基幹システムとのアプリケーション連携やDB連携機能を利用する必要があり,元売会社営業担当者の業務適応においては現時点の携帯端末能力では十分機能するとは思えない。

3.2 物流(油槽所)

  1. 在庫管理:出荷場や油槽所におけるバルク品のタンク在庫管理は各種計装システムにより集中して現場管理され,元売会社基幹システムにデータ伝送され統合的油量管理が行われている。操油現場によっては,オンライン接続されていない現場型計器もあり,各現場型計器のタグ番号を端末に表示させデータを入力させると同時にデータ伝送を行う利用が考えられる。また潤滑油ヤードにおけるパックド品の潤滑油の実在庫調査時に,携帯端末と周辺機器との組み合わせにより,実在庫のカウントとデータ蓄積・伝送に利用できると思われる。この方法は,既にコンビニエンス・ストアの店舗在庫管理手法として確立しているものである。
  2. 入荷,出荷:実入荷・出荷作業は予約情報等を元に日次作業計画が立てられ現場作業が行われる。特にいまだ現場計器がありその読みを人間にゆだねている所もあり,携帯端末の利用も可能である。
    多くの油槽所は,計装システムと情報管理システム(バック・オフィス・システム)が,連携して現場油量管理等の処理業務を行い,本社基幹システムと伝送インタフェース(バッチまたはオンライン)を構築している。したがって現場携帯端末からの情報は,情報管理システム(油槽所バック・オフィス・システム)に直接オンライン入力されるのが望ましいと考えられる。

3.3 中小口需要家

  1. 在庫管理:需要家GP(ガレージポンプ)現場において現場担当者のタンク在庫確認と情報収集とデータ送信作業にiモードやPDA端末が利用できると考えられる。
  2. 受発注業務:当該携帯端末の利用方法では比較的容易にシステム化が可能なケースと思われ,多くのソフトベンダーがiモード携帯電話,PDA利用のシステムを提案している。石油会社の受発注業務では,基幹システムがその処理を行っている場合が多く,受注受付の手段において,電話,自動FAX,PC端末,簡易端末,インターネットWebなどの「受注受付サブシステム」が前駆的処理を行っている。特に石油配送のオーダー・データは,他業種と比べ入力項目やデータ数が少なく,SSや需要家現場からの個別発注には携帯端末の利用が可能であると思われる。発注データ接続先は,特約店本社や特約店流通センターでいったn受信集約処理を行う方法と,前述の元売受注システムに直接発注する方法が考えられる。この場合,特約店勘定システムに対しデータ入力が必要であり,出先から本社帰着後に携帯端末の発注データをクレードル経由でデータ転送を行う。
    一般的にSSからの発注業務は,SSのPOSやSS端末を利用して既存公衆回線を利用してデータ伝送を行う場合が多い。特約店の受発注業務では,多くの場合,特約店配送担当部署で集中管理され,元売に集約された発注データが伝送される場合が多く,この場合は携帯端末の利用ではなく,PCや特約店情報端末(IT)からのダイアルアップ接続やインターネットWeb発注システムが利用される。

3.4 製油所業務と携帯端末利用

 製油所内での利用としては,オフサイト,オンサイトなど現場での作業指示,実績収集,計器室の情報表示などが考えられ,以下の応用例も挙げられる。

  1. 現場のパトロールとして,チェックリストの代わりに携帯端末を用いる。または,現場の写真をデジカメで撮影し,携帯端末を経由して計器室ないし工務部に伝送する。
  2. 計装システムの新規工事,更新工事でのループチェック作業,プラントのスタートアップ/シャットダウン中や運転中の各種現場作業中に,計器室のDCSで表示されるタグ情報(PV,SV,MV)を携帯端末に表示させ,現場と計器室とのやり取りを少なくし,作業効率を上げる。

4. おわりに

 現時点では,製油所などの製造現場においては,「防爆仕様」が問題となり,軽くて簡単に使用でき,かつ安いという携帯端末のメリットを生かしながら業務に利用できるものは残念ながらほとんどない。しかしながら,SSなど中小口利用の現場では現仕様のものでも十分に利用価値があると考える。
平成13年度では引き続き,高速,大容量,ワイヤレスに新たな展開となるIMT-2000に代表される携帯電話での無線通信技術やBluetoothなどの新たな通信方式を調査する予定である。

 

部会活動経営情報部会|トップページへ