水素クリーンエネルギー社会の構築を目指して
−水素製造技術の現状と課題−21世紀におけるエネルギー技術開発の重要課題の一つとして、環境汚染物質を排出しないクリーンエネルギー社会の構築が挙げられます。水素は2次エネルギーではありますが、燃料電池用の燃料等、クリーンエネルギーとして再び大きく注目されています。そこで、今回は水素製造技術の現状と課題と題して本セミナーを企画しました。
会期:2003年3月24日(月)9:40〜17:30
会場:学術総合センター・2階 中会議場(東京都千代田区一ツ橋)
主催:石油学会 共催:日本エネルギー学会
協賛:日本化学会、日本機会学会、化学工学会、触媒学会
開催挨拶と趣旨説明(9:40〜9:50)
石油学会 エネルギー部会長 都留 義之
2.水素エネルギー技術開発の現状と課題(9:50〜10:45)
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 水素技術開発室長 阿部 俊明氏
国家プロジェクトである「水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術(WE-NET)」は,平成5年(1993年)にスタートしている。現在は,平成11年(1999年)にスタートした第2期計画の4年目の研究を実施中である。WE-NET第2期計画は,研究サブテーマとして,(1)水素エネルギーのシステム評価,(2)安全対策技術,(3)水素供給ステーション,(4)水素製造技術,(5)水素貯蔵材料の開発,(6)革新的・先導的技術等の12テーマについて技術開発の現状と課題を述べる。
3.水素輸送方式(インフラ等)の現状と課題(10:45〜11:40)
(財)エネルギー総合工学研究所 WE-NETセンター 主管研究員 小林 紀氏
現状の水素供給量とその輸送方法を概括した上で,WE-NET計画で検討している水素輸送技術とその技術的課題について概説する。水素供給インフラについては,WE-NETの水素供給ステーションの試験結果およびWE-NETとは別に首都圏で計画されている水素供給インフラ実証試験の概要を報告する。水素燃料電池自動車普及の鍵となる水素供給コストについては,現在および将来期待される水素コストの検討結果を紹介し,水素コスト低減に向けた課題を技術的課題と法制度的な課題に分けて紹介する。
4.化石資源リフォーミング技術による水素製造の現状と課題(11:40〜12:35)
東洋エンジニアリング(株)技術研究所 所長 庄司 一夫氏
化石資源を原料とする各種水素製造法を概観するとともに,主として天然ガスを原料とする水蒸気改質法による水素製造法の現状と課題について,工業的,商業的利用の観点から述べる。さらに水素製造コストおよびその低減のための方策について議論する。これらの技術は,水素エネルギー社会を迎えるに当たって,技術的,経済的理由から,重要な水素供給法として期待される。
休憩(12:35〜13:30)
5.バイオマスからの水素製造技術の現状と課題(13:30〜14:25)
広島大学大学院工学研究科 助教授 松村 幸彦氏
バイオマスからの水素製造技術について概観する。含水率の低いバイオマスについては固定層,流動層,噴流床などのガス化技術を用いて,含水率が高いバイオマスについては超臨界水ガス化などを用いて,それぞれガス化を行った後に,生成ガスを改質して水素を得ることが可能である。前者の課題としてはタールの適正処理,小規模高効率システムの実現が,後者の課題としてはパイロットプラントによる技術の実証が挙げられる。
6.ソーラーハイブリッドによる水素製造技術の現状と課題(14:25〜15:20)
東京工業大学炭素循環エネルギー研究センター 教授 玉浦 裕氏
天然ガスの水蒸気改質および石炭のガス化に必要な吸熱エネルギーを太陽エネルギーで供給し(ソーラーハイブリッド化),シフト反応により水素を製造する技術について太陽エネルギーによるハイブリッド化技術の実用化に向けた開発状況,および経済性評価による新産業技術としての可能性について述べる。水素ガスパイプラインでの海外での市場性やメタノールでの水素輸送による日本向け水素の市場性が注目されている。
休憩(15:20〜15:35)
7. 熱化学法による水からの高温ガス炉水素製造技術の現状と課題 (15:35〜16:30)
日本原子力研究所 大洗研究所 核熱利用研究部次長 小川 益郎氏
まず,高温ガス炉を用いた水素製造の意義,水素製造の経済性について述べ,その研究開発における主要課題について概観する。次に,主要課題の一つである高温ガス炉を熱源として用いる水の熱化学分解法ISプロセスについて,我が国および世界におけるこれまでの研究開発の経緯,現状,課題,目標ならびに今後の計画について述べる。
8. 光電気化学的手法による水からの水素製造技術の現状と課題(16:30〜17:25)
産業総合技術研究所 光反応制御研究センター長 荒川 裕則氏
太陽光エネルギーを用いた水の直接分解による水素の製造法は,環境に負荷を与えないクリーンエネルギー製造の観点から重要な技術開発課題である。本講演では,太陽光エネルギーの利用を意識した光触媒的ならびに光電気化学的水素製造法の研究開発の現状と実用化に向けての課題について紹介する。
9. 閉会の挨拶(17:25〜17:30)
日本エネルギー学会 新エネルギー部会長 荒川 裕則
懇親会(17:30〜19:00)
会場: 学士会館
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