技術進歩賞
磁気軸受適用ユーティリティレス超高速モータ可変速ドライブシステムの開発
東芝三菱電機産業システム株式会社 殿
本技術は,超高速モータ可変速ドライブ技術において,磁気軸受,強制空気冷却式モータ,および二次冷却水レス水冷インバータシステムを適用することにより,ユーティリティレス(潤滑油・冷却水レス)システムを実現したものである。
既存技術においては,潤滑油を必要とするスリーブ軸受方式の二極モータに増速ギアやインバータなどを組み合わせて超高速ドライブシステムを構築しており,また高速大容量モータ本体の冷却方式にはコンパクト化や振動抑制の観点から水冷方式の採用が一般的であり,これらの理由から潤滑油や冷却水などのユーティリティを必要とする。
本技術においては,インバータ駆動によりモータ回転数を非駆動側のコンプレッサの回転数(9400 rpm程度)に合わせることで潤滑油を必要とする増速ギアを削減している。また,軸受部には超高速運転に対応した磁気軸受を適用することにより軸受部の潤滑油レスを実現している。一方,モータ本体の冷却方式に強制の空気冷却方式を採用し,インバータの一次冷却系には水冷方式を,二次冷却系にはエアフィンクーラを適用することにより,初期充填されるインバータ用の一次系冷却水を除き,システム全体としての冷却水レスを実現している。
一般に,超高速モータにおける重要な技術要素としてロータ構造および軸受構造の2点を挙げることができる。超高速モータにおけるロータ構造としては機械的な利点から塊状鉄心としたソリッド構造が採用されることが多いが,本技術においてはこれまでの研究成果により,機械的な強度と電磁気的な運転安全性を両立した電磁鋼板の積層構造を実現している。これにより,ユーティリティレスの特徴に加え,損失低減や力率向上においても高い優位性を確保している。また,磁気軸受においてはタッチダウン補助ベアリングを含めたモータ本体へのカスタマイズや,防爆形電動機として磁気軸受までを対象とした防爆構造や制御技術に関する独自開発により,超高速モータの軸受構造における技術向上が図られている。
本技術においては,超高速モータ可変速ドライブシステムにおける技術基盤に,磁気軸受という新たな要素技術を融合させることで技術シナジーが創造され,技術的な進歩が担保されている。 本技術の開発は2005年から行われ,これまでにロシア向けのガスパイプラインと日本国内向けのガス処理設備の2施設に納入され,磁気軸受適用ユーティリティレス超高速モータ可変速ドライブシステムとしての性能が確認されている。ユーティリティの供給や利用制約が多い遠隔地や極寒地における石油やガス関連設備への技術的な貢献が期待できる。
よって,本業績は本会表彰規程第9条に該当するものと認められる。
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