奨励賞(双文社印刷賞)

実験と計算化学を融合した解析によるポリプロピレン用Ziegler-Natta触媒の活性点構造および触媒機能解明に関する研究

 

谷池 俊明 殿(北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科 准教授)

 ポリプロピレン製造の主力を担うZiegler-Natta触媒(ZN触媒)における活性点構造や触媒機能の解明は,ポリプロピレンの材料として高性能・高機能化を達成するための重要な課題である。しかし,ZN触媒は複数の機能を持つ活性点が固体表面上に形成された典型的な不均一系触媒であるため,活性点構造と触媒性能の関係についての解明が困難であった。
 このような背景の中で,谷池氏は,高い触媒調製技術と得意とする計算化学的な手法とを併せて駆使することで,ZN触媒における表面チタン種(活性点)の幾何学的および電子的構造と触媒性能の関係を明らかにしてきた。具体的な成果として,TiCl4とドナー成分(ルイス塩基)が担体であるMgCl2(110)上に1:1で共吸着することによって,Ti単核種が優先的に生成する「共吸着モデル」を提案し,この単核種がプロピレン重合の活性点であることを明らかにした。さらに,共吸着したドナー成分の立体的効果により触媒のアイソ特異性が発現し,電子的な効果によりプロピレン挿入の位置選択性が向上することを見出した。
 このほか,谷池氏は,重合中に粒子破砕を起こさないMgOナノ結晶をコアとした,コアシェル型MgO/MgCl2/TiCl4ナノ触媒を調製し,担体の比表面積とプロピレン重合活性が比例することを実験的に明らかにした。
 谷池氏のZN触媒に関する一連の成果は多くの論文として公表されており,それらは産業界において実際の触媒開発に応用可能なものとして高く評価されている。 以上の業績は,不均一系触媒の構造・機能解明,とりわけ配位重合触媒分野とポリオレフィン産業の発展に大きく貢献するものと判断され,よって本会表彰規程第12条に該当するものと認められる。

 

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