論文賞
ケミカル圧入法が適用された石油随伴水に対する効果的な凝集剤の検討およびオマーンにおける連続処理試験
小島 啓輔 殿,田崎 雅晴 殿,岡村 和夫 殿*1),Mark SUEYOSHI 殿(清水建設(株))
Rashid S. AL-MAAMARI 殿(Sultan Qaboos Univ.)
(所属は論文発表時のものです)
Rashid S. AL-MAAMARI 殿(Sultan Qaboos Univ.)
(所属は論文発表時のものです)
1970年以降,石油増進回収(EOR)技術の開発が進められてきた。OPEC非加盟国ながら大規模産油国であるオマーンでは,EOR技術の適用により2007年以降産油量の増加傾向が見られている。しかし,当初適用された従来のEOR技術は天然ガスや蒸気を注入する方法であり,天然ガス不足や地下水枯渇が懸念されることからケミカル圧入法への転換が検討されている。
油井から原油を生産する場合,エマルジョン化した油を含む大量の石油随伴水が廃棄物として生じるため,その処理技術が重要となっている。ケミカル圧入法が適用された石油随伴水では,注入される薬剤(増粘剤)の影響により随伴水自体の粘性が高くなるなど,従来法で生じる石油随伴水とは異なる性状をもつため,新たな処理技術の確立が求められている。
小島氏らは,凝集性とコストの観点から凝集剤としてポリ塩化アルミニウムおよび硫酸バンド(硫酸アルミニウム)を選択し,凝集効果に及ぼす「EOR用増粘剤」「油分」「アルカリ度」の影響について詳細に評価,解析した。その結果,従来の石油随伴水に対してはポリ塩化アルミニウムよりも凝集効果が低い硫酸バンドが,ケミカル圧入法で生じた増粘剤含有石油随伴水に対してはポリ塩化アルミニウムより高い凝集効果を示すこと,またその凝集効果はpHやアルカリ度の影響によるものではなく,随伴水に含まれる無機炭酸と増粘剤との共存により効果的に作用するという重要な知見を得た。さらに,これらの知見をパイロットプラントの設計,運転条件,処理フローに反映させ,実際にオマーンにてパイロットプラントによるケミカル圧入法が適用された増粘剤含有石油随伴水の連続処理試験を実施し,硫酸バンドを用いることにより効果的な凝集処理が可能であることを実証した。
以上のように,本研究により得られた知見および実証試験結果は,ケミカル圧入法が適用された石油随伴水の凝集処理技術の実用化につながる顕著な成果であり,今後の原油回収技術の発展に寄与するものである。よって,本論文は本会表彰規程第6条に該当するものと認められる。
[対象論文]J. Jpn. Petrol. Inst., 57, (6), 276 (2014).
(現在)
*1) (株)テクネット
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