技術進歩賞

超音波の多数回反射を利用した配管接触部等の腐食検査技術の開発

 

城下 悟 殿(非破壊検査(株)技術本部 副参与)
森重 裕 殿(非破壊検査(株)大阪事業本部 技術部)

 本技術は,表面伝播信号と多数回反射信号を組み合わせることで,高所配管架台接触部などの腐食検査を高い精度で実施することを可能にした検査技術に関するものである。
 腐食や溶接により発生した欠陥の位置およびサイズを精度よく特定できる既往のTOFD(Time of Flight Diffraction)法は,送受信に用いる探触子の間隔を長くとることができず,配管架台のように配管やその下に敷かれる補強板が障害物となる部位に適用することは困難である。TOFD法の弱点を改善する方法として,横波斜角を用いる方法が試みられているが,配管架台部では信号減衰のため十分な検出精度を得ることはできない。近年,配管架台接触部への適用に特化した検査技術も提案されているが,測定方向が周または長手方向のみであること,検査対象は外面減肉に限定されていることなど種々の制約があり,汎用性・実用性の観点で満足いくものではない。
 本技術は,超音波の多数回反射を利用することで,従来技術では困難であった配管架台接触部やダミーサポート部などの腐食検査を高い精度で実施することを可能にしたところに技術の新規性・進歩性が認められる。内外面の腐食を識別できる点は従来技術にはない特長であり,腐食原因の究明や補修などの対策を検討する際に有益な情報となる。
 本技術は当初,発電プラントの補強板下の腐食検出技術として開発され,その後改良を加えることで配管架台接触部の腐食検査にも適用できるようなった。現在までに石油精製および石油化学プラントを中心に本技術の適用が進められているが,最近の3年間では200を超えるプラントで腐食検査ならびに腐食進行状況のモニタリング目的として活用されており,市場からも高い評価を得ている。配管架台接触部の腐食は従来,漏洩するまで腐食の進行を検知することができず,プラントの緊急停止に至るケースもあったが,本技術を適用することで予防保全措置を講じることができるようになった点は評価に値する。
 配管架台接触部やダミーサポート部などの外面腐食は,高経年化が進む国内外のプラントでは保温材下腐食とともに,安全操業を脅かす重要な問題として認識されている。本技術は,腐食発生有無を正確に特定できる非破壊検査技術として,腐食検査ならびに腐食進行状況のモニタリングに活用可能であり,プラントの安全かつ安定な操業に資するのみならず,リスク評価や保全計画立案にも寄与するものと考えられる。よって,本技術は本会表彰規程第9条に該当するものと認められる。

 

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