野口記念奨励賞

新規マトリックス成分として第一リン酸アルミニウムを配合したFCC触媒の開発

 

坂 祐司 殿(コスモ石油(株)技術研究ユニット 中央研究所 副主任研究員)

 近年,重質燃料油の需要減退および環境負荷低減の必要性を背景に,重質油分解技術であるFCCプロセスにおいて高度な触媒性能が求められている。とくに,高い分解活性と高オクタン価のガソリン生成が両立する新たなFCC触媒の開発が要望されている。坂氏は,ゼオライトの安定性を向上させ,かつオクタン価の低下を抑制させるマトリックス成分について検討し,新規マトリックス成分として第一リン酸アルミニウムを配合したFCC触媒の開発を行った。
 具体的には,FCC触媒におけるゼオライトの安定化のために従来行われてきた希土類金属添加に代わり,第一リン酸アルミニウムをマトリックスに配合することにより,重質原料中に含まれるバナジウムによるゼオライト結晶構造の崩壊を抑制し,また再生塔における水熱条件下での脱アルミニウムによるゼオライトの分解活性点の脱離を抑制する効果を見出し,その結果,FCC触媒として高い分解活性を維持することが可能となった。また,希土類金属を用いた場合に比べ,生成するガソリンのオクタン価が高くなる効果も見出した。
 さらに,この新規マトリックス成分を配合した実用触媒を設計・開発し,商業装置に導入して触媒性能を検証し,従来触媒に比べて,分解活性,FCCガソリン得率,FCCガソリンのオクタン価のいずれも増大することを実機で確認した。このように,本研究とそれに基づく技術は新規性と独創性に富むものであり,また商業レベルまで開発した完成度の高い技術である。
 坂氏は,このFCC触媒開発研究を基礎段階の研究やその成果に基づく特許出願から,実用触媒の開発および実機を用いた工業的実証に至るまで,一貫して主体的に行ってきた。以上の理由により,同氏の研究業績は本会の野口記念賞表彰規程第2条2項に該当するものと認められる。

 

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