技術進歩賞

焼成型高活性軽油脱硫触媒の実用化と生産性向上

 

JX日鉱日石エネルギー株式会社 殿
日揮触媒化成株式会社 殿

 本技術は,原料軽油から硫黄分10 ppm以下のサルファーフリー軽油を一段で製造するための水素化脱硫触媒の開発と実用化に関するものである。原料軽油には4,6-ジメチルジベンゾチオフェンなど難脱硫性硫黄化合物が含まれており,灯油やガソリンに比べ脱硫が困難である。そのため軽油の脱硫装置は過酷な条件下で運転されるので,水素化脱硫では高活性で長寿命な触媒が求められる。近年,軽油のサルファーフリー化に対応するため非焼成型の脱硫触媒が開発され,世界的にシェアを伸ばしてきた。しかし,非焼成型触媒は水素消費量が多く,また触媒再生においても特殊処理を必要とすることから,運転コストや触媒コストが増大するという欠点をもっている。
 本技術開発では,触媒活性種である二硫化モリブデンとの相互作用が大きいとされる周期表4族の金属酸化物に着目し,アルミナに4族金属酸化物を高担持量で導入する調製法の開発に取り組んだ。担体調製において,担体成分の均質化を制御することにより,4族金属酸化物を数十%加えてもアルミナ中での高分散性を維持する担体製造法を見出した。この担体では,4族金属酸化物の結晶を示すX線回折ピークが観察されなかった。さらに,14族元素の酸化物を少量加えることにより高表面積化を実現できた。この担体を用いて,モリブデン量とコバルト量の最適化を行った結果,従来の自社開発触媒と比べてモリブデン担持量を15 %低減でき,しかも活性を20 %向上させることに成功した。硫化後の開発触媒の透過型電子顕微鏡観察より,二硫化モリブデンの平均粒子径は3.6 nm,積層数1〜2層であることが示され,触媒活性種が高分散化されていることが確認された。当該触媒は,これまで開発された焼成型触媒の中では最高レベルの活性を示したと海外で評価された。
 本開発触媒は,ベンチプラントおよび商業装置において,既に多数の商業実績がある非焼成型触媒と同等以上の活性を示すことが分かった。また,開発触媒が焼成型触媒であるため,使用済み触媒の再生においても,従来の安価な燃焼再生技術を用いて,新品対比90 %以上の活性を回復できることが確認された。当該触媒の商業実績は2011年6月から始まり,JX日鉱日石エネルギー5製油所,軽油脱硫装置6基への導入に及んでおり,総触媒量は約1000 m3である。さらに,3基の灯油脱硫装置にも導入され,総触媒量は約200 m3である。
 以上,本技術は、軽油水素化脱硫触媒の性能を格段に高め,サルファーフリー軽油の生産性向上に資するものである。よって本技術は,本会表彰規程第9条に該当するものと認められる。

 

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