野口記念賞

有機ハイドライド法を利用した水素エネルギーの大規模貯蔵輸送システム技術の開発

 

千代田化工建設株式会社 殿

 本技術は水素を汎用性高く有効利用するための技術であり,具体的には,水素化プロセスによって水素とトルエンとを反応させてメチルシクロヘキサンを合成し,このメチルシクロヘキサンの貯蔵輸送を行い,水素の利用先にてメチルシクロヘキサンから脱水素プロセスによって水素を取り出すものである。このようなメチルシクロヘキサンに代表される有機ハイドライド法による水素の貯蔵輸送は1993年からの新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術研究開発(WE-NET)」の以前より非常に注目されていた技術であるが,これまでは特に脱水素プロセスの触媒における炭素析出による劣化などの問題があり,工業規模で利用できる技術ではなかった。今回,千代田化工建設(株)は,アルミナ担持白金触媒を独自に改良,ナノクラスター化し,さらに硫黄などの添加剤による炭素析出耐性付与により,工業的に利用するための十分な性能と耐久性を得ることに成功した。また,これらの触媒を用い,50 Nm3-H2/hの水素化・脱水素の実証プラントを建設し,運転実績を上げ,大規模な実用化への端緒をつけた。
 水素の大量貯蔵輸送技術には,液体水素を用いる方法,アンモニアや有機ハイドライドを用いる方法,無機材料からなる貯蔵材料を用いる方法など,幾つかの候補が上げられているが,有機ハイドライド法はタンクローリーからケミカルタンカークラスでの大規模な水素の貯蔵輸送が可能であり,今回の開発成果により,有機ハイドライド法の大規模な応用可能性が示された。
 千代田化工建設(株)は,外国で二酸化炭素回収貯留(CCS)を用いて化石資源から製造される水素や,再生可能エネルギーからの電力で製造される電解水素の貯蔵輸送に本技術を用いることを検討していて,これら二酸化炭素の排出を伴わないエネルギー活用技術はエネルギー・環境問題に多大な貢献をするものと期待される。
 本技術は現時点では経済的貢献や販売実績をもつものではないが,基幹エネルギー技術の本質的な部分に直接関与する技術のため,実用化された場合には経済的効果は甚大であり,その重要性は社会的にも認知されている。
 2014年12月には燃料電池車が販売開始されたことで水素ステーションなどの建設が促進され,さらに2015年1月には東京都が2020年東京五輪・パラリンピック選手村の水素タウン化構想を発表するなど,水素技術への注目が飛躍的に集まっている。これらの水素エネルギーの普及において,本技術は様々な形態で応用が可能なことが見込まれる。よって,本技術は本会野口記念賞表彰規程第2条1項に該当するものと認められる。

 

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