学会賞(表彰規程第3条2項に該当するもの)[工業的]
ディーゼル燃料を活用した窒素酸化物・粒子状物質の同時除去触媒システムの開発
佐藤 信也 殿,舩山 悦弘 殿,古川 卓俊 殿,石井 森 殿(日野自動車(株))
岩本 正和 殿(東京工業大学)
岩本 正和 殿(東京工業大学)
経済成長とともに,世界的にトラックや重機の需要が増え,ディーゼルエンジンからの排出ガスによる環境汚染が大きな課題となっている。ディーゼルエンジン排出ガスに含まれる粒子状物質(PM)と窒素酸化物(NOx)に対する規制が厳しくなり,その規制に適合できる技術の開発が盛んに進められている。大型ディーゼル商用車では排出ガス処理装置として,PM捕集フィルター(DPF)とアンモニアによるNOx選択還元触媒の組み合わせシステムが実用化されている。
一方,佐藤氏らは,小型中型ディーゼル商用車への適用が可能な尿素水を用いないメンテナンスフリーの排出ガス処理システムを実現するための研究開発を行い,軽油のみを活用したNOx・PM同時除去触媒システムを世界に先駆けて開発した。本システムは,小型酸化触媒,燃料添加弁,前段酸化触媒,DPF,後段酸化触媒を順に並べ,燃料によるNOx選択還元反応とPM除去を同時に実現できることを特徴としている。前段酸化触媒には白金系の触媒を,後段酸化触媒には白金・パラジウム系の触媒を搭載し,それぞれ異なる温度範囲でNOx選択還元活性が発現するように工夫されており,広い温度域でのNOx低減を可能としている。DPF上には超微粒子化した金属酸化物と白金を含むNOx選択還元・PM除去触媒が担持されており,200 ℃程度の低温でのNOx除去性能の向上と難燃性PM粒子の500 ℃以下での低温除去を実現した。
また,小型酸化触媒と燃料添加弁を装着することで,エンジン筒内へのポスト燃料噴射による排出ガス温度の急速昇温とDPF再生時の燃料消費量の60 %程度の節減を実現した。加えて,エンジン制御を工夫することによって,NOx除去率の向上とDPFで捕集したPMの効率的な低減を両立させ,国内の排出ガス規制値を達成した。
日野自動車(株)では,本技術を搭載した小型中型ディーゼル車の販売を2010年より開始し,世界で最も排出ガス規制が厳しい日本での販売実績を着実に伸ばしており,2012年における同クラス車両の販売シェアは35.2 %に達している。本技術は,日本や欧米などの先進国で販売される小型中型ディーゼル車への適用のみならず,今後,排出ガス規制の強化が予定されている新興国への展開が可能であり,環境保全への貢献や石油資源の有効利用促進も期待できる。よって,本業績は本会表彰規程第3条2項に該当するものと認められる。
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