奨励賞（千代田化工建設賞）

熱水中でのバイオマスの資源化技術開発

　

　山口氏は，環境負荷の低い新たな化学プロセスによって，石油化学原料を代替するバイオマス資源の利用を加速するため，超臨界水および高温水を反応溶媒とするバイオマス利用反応技術の研究に取り組んできた。その結果，（1）超臨界水と担持金属触媒を利用したリグニンからの燃料ガス製造，および（2）高温水と二酸化炭素を利用したバイオマス由来多価アルコールからの有用物質製造の技術開発に成功した。
　山口氏はまず，超臨界水中で担持金属触媒を用い，400 ℃という従来の気相での改質と比較して低い反応温度でリグニンを水素とメタンに効率的に変換した。本プロセスでは触媒開発が重要課題であり，新規な触媒調製法により高活性な担持ルテニウム金属触媒を開発した。本触媒は超臨界水中で安定な活性を示し，再利用可能であった。本触媒は，さらに低い250 ℃の高温水中で古紙を100 %の反応率でガス生成物に変換した。
　次に，バイオマス由来多価アルコールの有用物質への変換のために高温水中での脱水反応を検討し，反応系内に二酸化炭素を共存させることにより，高温水のプロトンに加え，生成した炭酸により酸触媒反応が促進されることを実証した。すなわち，強酸や固体酸を用いることなく，高温水と二酸化炭素のみによりバイオマス由来多価アルコールを分子内脱水反応で有用化成品に変換でき，二酸化炭素圧力の増大に伴って脱水反応速度が上昇することを示した。
　これら山口氏の業績はバイオマス利用の分野において研究と技術の両面で多大な進歩をもたらすものと期待でき，よって本会表彰規程第12条に該当するものと認められる。

 

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