奨励賞（出光興産賞）

水中で機能する酸化ニオブおよびスルホン化カーボン固体酸触媒の開発とバイオマス変換反応への応用

　

　中島氏は，燃料および化学品の製造において現在重要な役割を果たしている硫酸を，より環境負荷の低い固体酸触媒で代替することを目指した研究に携わり，特にバイオマス変換のための酸触媒反応に関する研究において優れた業績を挙げた。
　セルロースに由来する糖等のバイオマス関連物質と，それらの変換により得られる有用な化学品の多くは水に溶解する。そのため，反応場として水が適した溶媒とされ，水中で機能する固体酸触媒の創製が求められてきた。このような中，中島氏は，アモルファス酸化ニオブ中の4配位ニオブイオンが水中で機能するルイス酸点となっていることを見出した。さらに，グルコースの5-ヒドロキシメチルフルフラールへの変換反応等の様々な酸触媒反応に対して，この酸化ニオブが極めて有効な触媒であることを示した。同氏のこれらの研究は，水中で機能する固体ルイス酸という新しい概念を提案するものであり，高い独創性・新規性を有するものである。
　セルロースの加水分解反応などに有効なスルホン化カーボン固体酸触媒は，従来の固体酸触媒と比較して劇的に高い活性を有するが，中島氏はこの触媒機能を解明し本触媒系の研究をさらに進化させた。特に，カーボンシート上のカルボン酸やフェノール性水酸基が反応基質を強く吸着するという本触媒系特有の性質が、特異な高活性を引き出す理由であることを明らかにした。この成果は，バイオマス変換反応に有効な固体酸触媒を創製する上で極めて有用な設計指針を与えるものと高く評価される。
　以上の業績は，エネルギーや環境分野に関連する触媒化学，特に固体酸触媒化学の進展に多大な貢献をなすものと判断され，よって本会表彰規程第12条に該当するものと認められる。

 

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