学会賞(表彰規程第3条1項に該当するもの)[学術的]

分子レベルでの重質炭化水素資源の成分分析と金属ナノ粒子触媒の設計に関する研究

 

三宅 幹夫殿(北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科 教授)

 三宅氏は,フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析法(FT-ICR MS)を用いた重質炭化水素資源の分子レベルでの詳細成分分析を世界に先駆けて実施するとともに,アルキル化による解重合反応など独自の高選択的な反応を利用した重質炭化水素の反応サイトや反応機構の解明に関する数多くの成果を挙げている。また,活性点を制御した金属ナノ粒子の調製法を開発し,分子レベルでの反応設計法に関しても優れた成果を挙げている。以下に同氏の研究成果をまとめる。
 (1) FT-ICR MSを用いた重質油の分子レベルでの成分分析
 三宅氏は,新しい原理に基づくFT-ICR MSが,ほとんど普及していない初期の段階から超高分解能を有することに着目し,エレクトロスプレーイオン化(ESI)法を組み合わせることで,複雑で多成分からなる重質油に対して,分離前処理することなく簡便に分子レベルで分析することに世界に先駆けて成功している。このFT-ICR MSによる画期的な重質油の成分分析法は,その後世界的に注目を集め,急速な発展と普及を遂げている。
 (2) 高選択的な反応を利用した重質炭化水素の反応サイト・反応機構の解析
 化学構造が複雑で多成分の混合物からなる重質炭化水素資源の強塩基や電気化学的な電子移動反応,四酸化ルテニウムを用いる酸化反応,アルキル化による解重合反応など高選択的な反応を数多く独自に開発し,重質炭化水素資源のノーブルユースを図るために重要な反応サイトや反応機構を有機化学的な知見をもとに詳細に解析した。このような重質炭化水素資源の複雑な反応特性を解明しようとする独創的な戦略は,これら資源のノーブルユースを目指した反応の設計に極めて重要であると高く評価されている。
 (3) 反応設計のための精緻に構造制御した金属ナノ粒子触媒の調製と評価
 三宅氏は,白金ナノ粒子の調製法の開発やその白金ナノ粒子への銀のエピタキシャル的複合化の成功など,精緻に制御した金属ナノ粒子の独創的な合成法を数多く開発し,触媒の活性点を精密設計することで,従来達成できなかった分子レベルでの反応設計指針の導出に成功している。活性サイトを精密に設計・制御した触媒の開発法として,その研究成果の応用展開が国内外から期待されている。
 以上の通り,三宅氏は,重質炭化水素資源に対し有機化学を背景とした独自の分析手法,反応設計法を開発するとともに,先端的な分析機器の適用法を開拓することにより,これら資源のノーブルユースを実現するための独創的かつ先駆的な学術的研究業績を挙げている。よって,本会表彰規程第3条1項に該当するものと認められる。

 

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