奨励賞(新日鐵化学賞)
光エネルギーを利用した低温アンモニア脱硝反応に関する研究
寺村 謙太郎殿(京都大学大学院工学研究科 講師)
寺村氏は,これまで環境やエネルギー問題の解決に資する光触媒反応の研究に携わり,特に光エネルギーを利用した低温アンモニア脱硝(光-SCR)反応に関する研究において優れた業績を挙げた。
各種固定発生源から排出される窒素酸化物NOx はアンモニアによる選択還元(NH3-SCR)により除去されている。しかし,本反応における触媒の作動温度は約400 ℃と高く,プロセスの設置位置によっては排ガスの再加熱が必要となるため,触媒作動温度の低温化が望まれている。このような中,寺村氏は,二酸化チタンを光触媒として用い,常温・常圧において実用条件下(GHSV=8000〜16,000 h-1),NO転化率90〜100 %およびN2選択率96 %の高い効率を示す光-SCR反応を見出した。さらに同氏は,速度論的手法,分光学的手法,量子化学的手法により光-SCR反応の機構を明らかにするとともに,律速反応過程を促進するための触媒設計を行い光触媒反応効率の向上を達成した。
具体的には,二酸化チタンのルイス酸点上に吸着したアンモニアが新たな表面準位(ドナー準位)を形成し,生成した吸着種が積極的に光吸収に関与しNH3-SCR反応が進行するという光触媒の新たな作用機構「in-situ doping」を明らかにした。さらに,NH2ラジカル種とNOの反応により生じたニトロソアミド種の分解がNH3-SCR反応の律速段階となることを見出し,この過程を促進する弱酸点を二酸化チタン上に構築することで光触媒反応効率の向上を実現した。このように,寺村氏は,光エネルギーを利用した低温アンモニア脱硝に関して独創的かつ優れた業績を挙げた。
以上の研究成果は,エネルギー・環境分野の光触媒化学の進展に多大な貢献をなすものと判断され,本会表彰規程第12条に該当するものと認められる。
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