技術進歩賞

減圧軽油脱硫用の新規多成分系触媒の開発

 

関 浩幸殿(JX日鉱日石エネルギー(株)研究開発本部 中央技術研究所 チーフリサーチャー)
吉田 正典殿(JX日鉱日石エネルギー(株)研究開発本部 中央技術研究所 シニアスタッフ)

 本技術は,アルミナ担体への多成分添加および有機酸を同時に使用した高活性かつ安価な新規減圧軽油脱硫(VGO-HDS)用触媒を開発し,商業装置で使用したものである。
 減圧軽油脱硫装置は流動接触分解(FCC)装置の前処理に位置するため,VGO-HDS触媒は脱硫活性のみならずFCC触媒の劣化を抑制するために高い脱窒素活性も要求される。一般に脱硫触媒は,モリブデンを主成分,コバルトやニッケルを助触媒としてアルミナに担持されたものである。近年,これらの金属の急激な価格高騰に伴い,脱硫触媒価格も2000年初頭に比べて一時数倍に跳ね上がった。軽油や減圧軽油の脱硫装置において,触媒コストは1基あたり数億円規模となるため,製油所生産性には大きな影響を与える。そこで,高活性かつ安価な触媒開発を目指して2007年から検討をスタートし,2009年製油所商業装置への導入を実現した。開発から実用化までは比較的早く,短期間で完成したものである。また本技術に関連して2009年から4件の特許を出願した。
 本技術では,金属含浸液に有機酸をキレート剤として添加することで活性金属の高分散を達成し,さらに担体を複合化させることでモリブデンと担体との相互作用を調整して,従来よりも金属担持量が少ないにもかかわらず,脱硫および脱窒素活性を飛躍的に向上させることに成功し,FCC装置に供給するために適した原料を製造できる触媒を開発することができた。また,従来の触媒では,キレート剤を使用した場合,活性金属の担持後,焼成を行わずに乾燥のみで製造されるが,本技術ではキレート剤を用いながらも活性金属担持後,あえて焼成することによって触媒の運転初期の劣化を抑え,初期から安定した活性が得られる。水素消費量も非焼成型触媒より低いという特徴を有しており,従来触媒に見られない新規性・進歩性がある。
 このように本開発触媒は従来触媒よりも高活性かつ安価であり,触媒費用削減と触媒寿命の延長により処理量の増大を可能とした。現在,5製油所の6装置(合計処理量200,000 BPD)に導入され,いずれの商業装置も順調に稼働している。使用する触媒総量は約1000 m3であり,これは日本全体のVGO-HDS装置で使用されている全触媒量の20 %以上に相当する。また,従来触媒の置き換えや再生触媒との組合せにより,触媒費削減を可能とした。
 以上の点から,本技術は本会表彰規程第9条に該当するものと認められる。

 

表彰平成23年度表彰受賞者一覧|ページへ