奨励賞(コスモ石油賞)
MCM-22およびベータゼオライト触媒の合成・高性能化に関する研究
稲垣 怜史殿(横浜国立大学 学際プロジェクト研究センター 特任教員(助教))
稲垣氏は,ゼオライトの合成・修飾および触媒反応を検討している。200種類以上あるゼオライトの中でも,工業触媒として実用化されているMCM-22やベータゼオライトに着目し,ゼオライトの生成機構や基礎的な触媒作用の解明,それらの高性能化に取り組んできた。
まず,ドライゲルコンバージョン法を用いることにより,水熱合成法ではなし得なかった粒子径の大きいMCM-22ゼオライトの合成に世界で初めて成功した。本ゼオライトはパラキシレン合成に対して水熱合成によって得られるMCM-22より,高い形状選択性を示した。さらに,MCM-22の層間拡張による細孔径の拡大を達成した。すなわち,シート構造同士が脱水縮合するときにシリケートモノマーを共存させておくと,シリケートモノマーが結晶構造の一部として取り込まれ,酸素10員環ミクロ孔が12員環ミクロ孔へ拡大することを見出した。これは新しいゼオライトの合成とも言うべき画期的な成果であり,ゼオライトの細孔径の精密制御に新しい可能性を提示した。
また稲垣氏は,固相と水相が共存しないというドライゲルコンバージョン法の特徴を生かしてゼオライトの結晶化段階における固相の詳細なキャラクタリゼーションを行った。その結果,ゼオライトベータの結晶化には2種のsecondary building unit,すなわちD3Rおよび4-2シリケートユニットが必要であること等を明らかにし,未解決なゼオライト生成機構の解明に大きな進歩をもたらした。
以上の研究成果は,石油化学プロセスで用いられているゼオライト触媒の設計・開発・高性能化において学術・応用の両面で多大な進歩をもたらすものと判断され,本会表彰規程第12条に該当するものと認められる。
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