学会賞(表彰規程第3条2項に該当するもの)[工業的]

オレフィンインターコンバージョンによる新規プロピレン製造プロセスの開発と工業化

 

旭化成ケミカルズ株式会社殿

 石油化学基礎原料の一つであるプロピレンは,主にナフサクラッカーからエチレンの連産品として製造されており,今後も堅調な需要の伸びが予想されている。一方,クラッカー原料はナフサから安価なエタンにシフトしつつある。エタンクラッカーからはプロピレンが連産されないことから,将来的なプロピレンの需給ギャップが懸念されており,新規なプロピレン製造プロセスの開発が強く求められている。このような状況下において,旭化成ケミカルズ(株)は,ナフサのスチームクラッキングや石油精製の流動接触分解(FCC)から副生する高濃度の低級オレフィンを原料として,オレフィンインターコンバージョンによる独自のプロピレン製造プロセスの開発と工業化を達成した。
 本技術の特徴の一つは触媒にあり,高プロピレン選択性と高耐久性の両方を達成させるために,非プロトン型(主にAgNa型)ZSM-5系ゼオライトを開発・採用している。本触媒は,銀イオン交換量によって容易かつ精度良く触媒活性の制御を行えることに加えて,耐コーキング性を備え,また触媒再生時に発生するスチームによる劣化に強いという特徴がある。さらに,本触媒ではオレフィンのみが選択的に反応するために,反応器内での吸熱はわずかであり,シンプルな固定床断熱型反応器の採用を可能としている。ナフサクラッカーに併設する際には,低価値のラフィネートを原料とすることによってナフサクラッカーのプロピレン/エチレン比を向上させることが可能であり,またエチレン・プロピレンの合計生産量を保ちつつ原料ナフサの使用量を低減させることが可能である。
 本プロセスでは,ナフサクラッカーと比較して温和な温度条件で接触分解を行うために,オレフィン生産量あたりの消費エネルギーを低減できるので,CO2の削減にも寄与している。さらに,原料として,ナフサクラッカーから得られるラフィネート(主にブテン)のみならず,FCCからの低級オレフィンなども使用可能であり,応用範囲も広いと考えられる。
 このように,本技術は石油化学あるいは石油精製の分野において付加価値の低い炭化水素の高付加価値化に貢献できる技術であり,本会表彰規程第3条2項に該当するものと認められる。

 

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