奨励賞

アニオン性界面活性剤および塩基性アミノ酸を用いた規則性シリカ多孔体の創製とその応用

 

横井 俊之殿(東京工業大学資源化学研究所)

 横井氏は,均一なメソ構造を有する規則性多孔体の合成に新しい原理を導入し,構造解析,修飾,触媒特性に関する研究を重ね,優れた業績を挙げてきた。
 まず,アニオン性界面活性剤を用いた規則性の高いメソポーラスシリカ(Anionic surfactant template Mesoporous Silica : AMS)の合成に初めて成功した。横井氏は,正電荷を帯びうる有機官能基を有する有機シランがアニオン性界面活性剤と静電相互作用しうることに着目し,オルトケイ酸エチルとアミノ基をもつ有機シランの混合物をシリカ源として用いることにより,AMSが合成できることを見出した。また,シリカ‐アミノ基‐界面活性剤からなるAMSの前駆体から界面活性剤のみを抽出除去することにより,固体塩基触媒や吸着剤として応用可能なアミノ基含有メソポーラスシリカを合成することにも成功した。
 一方で,横井氏は,単分散球状シリカ粒子の新しい合成法を開発し,そのシリカ粒子が規則的に集積したコロイド結晶体が簡単な乾燥操作で生成することを見出した。塩基性アミノ酸とオルトケイ酸エチルを水溶液中で反応させると10 nm程度の球状シリカが生成する。これらを集積させたコロイド結晶体は粒子間に均一なメソ細孔が存在しているため,規則性多孔体として様々な応用が可能である。
 横井氏は,さらに,この球状シリカ粒子の合成時に界面活性剤を添加することにより,単分散シリカ粒子自身にメソ細孔が空いた球状メソポーラスシリカナノ粒子の合成にも成功した。この粒子にTiを導入したメソポーラスナノ粒子が,かさ高いオレフィンの酸化に対し高い触媒活性を示すことも見出した。
 以上の横井氏の研究業績は,新規なナノ構造を有するシリカ系材料の創製と設計・開発において,学術的,応用面ともに大きな寄与を与えるものと判断され,本会表彰規程第12条に該当するものと認められる。

 

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