技術進歩賞

新規固体リン酸触媒を用いたイソブテンの二量化によるイソオクテン製造技術の開発と実用化

 

JX日鉱日石エネルギー株式会社殿

 本技術は,C4オレフィン留分のうち比較的需要の少ないイソブテンの有効利用に関するもので,イソブテンを選択的に二量化することにより,従来技術が必要としたパラフィンによる希釈や蒸留をすることなく,反応液をそのままリサイクルする簡便でかつオクタン価の高いイソオクテンを製造する技術の開発とその実用化を行ったものである。
 原料C4オレフィン留分の主成分は重合しやすいイソブテンであるが,本技術開発では新規な固体リン酸担持触媒を見出した。この触媒はシリカアルミナのような一般的な固体酸に比べて,高転化率の領域まで高い二量化選択性を有しており,イソオクテン収率を20%以上高めることに成功した。
 本技術開発では,触媒の開発だけでなく,運転条件の最適化も行った。本触媒は高い活性を有しており,またイソブテン自体の反応性が高いために,本技術は100℃以下の温和な条件で実施することができる。一方で,本触媒はリン酸を担体に化学的に固定していないため,従来の固体リン酸に比べてリン酸が脱離しやすいという弱点があったが,反応条件や担体細孔径および添加する水の量の最適化によりリン酸の脱離を従来の水準にまで抑制した。
 本触媒は二量化選択性が高いために,反応液を蒸留せずそのまま反応器入口へリサイクルしても選択性はほとんど低下しない。従来の技術では,オレフィンのオリゴマー化反応は発熱反応であるため冷却が必須であり,原料を不活性なパラフィン等で希釈するか,高価な管型等温反応器を用いている。また,触媒の二量化選択性が低い場合,逐次反応を抑えるために転化率を低くした数段の反応器で反応を行いプロセス全体の選択率を高めているが,多大なエネルギーが必要となる。これに対して本技術開発では,従来技術が必要とした高価な設備を不要とし,省エネルギー型の断熱反応器1基と蒸留塔1基で構成されたシンプルなプロセスとすることに成功した。
 本技術の特許は日本,米国,中国,およびシンガポールで取得済みであり,また本技術を用いた装置は2006年より実証運転が開始され,その後順調に商業運転へ移行している。本技術によって既に55,000トンのイソオクテンが製造され,そのイソオクテンはガソリン基材としてブレンドされてハイオクタン価ガソリンとして市場に出荷されており,その成果には十分有用性を認めることができる。
 よって,本技術は本会表彰規程第9条に該当するものと認められる。

 

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