技術進歩賞

重油脱硫装置使用済触媒の再生技術の革新

 

出光興産株式会社殿

 本技術は,従来再生利用(一度装置で使用した触媒を再生処理し,再び装置に充填して使用すること)が難しく廃棄されていた重油脱硫触媒の再生技術の改良と実用化に関するものである。既に灯油,軽油,減圧軽油等の軽質油脱硫触媒の再生技術は確立されており,コークを完全燃焼除去することを基本として,脱硫装置に再充填される再生触媒量は多い。一方,重油脱硫触媒ではコークやバナジウムの蓄積量が多く,再生するには両者を同時に除去する必要があるが,このコークとバナジウムの同時除去が困難なため経済的な許容範囲内で金属を回収した上で触媒を廃棄することが多かった。これは,蓄積したコークやバナジウムの再生触媒の活性への影響が十分に解明されておらず,安定な装置運転を可能にする再生触媒の使用基準が明確でなかったことが原因であると考えられた。
 本技術開発では,重油脱硫触媒の再生方法を詳細に検討し,触媒上に蓄積されたバナジウムが活性点の凝集に直接関与していないことを明らかにした。さらに,バナジウムがコークの酸化触媒として作用することを考慮してコーク焼成条件の最適化を図ることで,活性点の凝集を防ぎながらコークを除去できることを明らかにした。また,蓄積バナジウム量と細孔閉そくの関係をシミュレーションし,再生触媒の使用基準を明確にして商業装置での安定な運転技術を確立した。加えて,触媒強度の低下がコーク燃焼時に発生する硫酸によるアルミナ担体の硫酸アルミニウムへの変質であることを明らかにし,アルカリ土類金属を触媒再生時に加えることで硫酸アルミニウムの生成を抑えることに成功した。これらの技術開発によって,重油脱硫触媒の再生利用量を増加させることを可能とした。
 本技術は,自社における1998年の商業生産への適用開始から地道に改良が重ねられ,再生触媒比率30%の触媒システムにおいて全量新触媒と同等の性能を発揮することが実証されている。年間約500トンの重油脱硫触媒を安定的に再生利用しており,仮に国内の重油脱硫装置に適用された場合には推定3000トン/年の廃触媒の削減が可能となって,環境負荷低減およびリサイクル社会形成へ大きく貢献できると期待できる。一般的に再生触媒は新触媒より安価なため,両者の性能が同等であるならば触媒コストの削減による経済効果が見込める。さらに,コークとバナジウムが多量に蓄積する反応に供される他の重質油処理・分解触媒の再生にも応用できる可能性がある。
 以上,本技術開発の成果は石油精製における触媒の再生および利用技術を格段に進歩させたものと認められ,よって本会表彰規程第9条に該当するものと認められる。

 

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