技術進歩賞

高引火点・省エネルギー型油圧作動油の開発

 

昭和シェル石油株式会社殿

 本技術は,地球温暖化対策として,油圧作動油による油圧システムの省エネルギーと油圧作動油の高引火点化による火災リスクや操業コストの低減を同時に実現するために,油圧作動油に必要な潤滑性,熱・酸化安定性,抗乳化性,エラストマー適合性など,従来の基本性能を損なわずに,昭和シェル石油(株)独自の技術と理論により開発された高引火点・省エネルギー型油圧作動油に関するものである。
 最近のコンピューターシミュレーションを用いた研究によれば,油圧システムにおけるエネルギー損失は配管部およびフィルター部において支配的なことが報告されている。同社は,油圧作動油による油圧システムの省エネルギー対策として,これまでの高粘度指数基油の使用や添加剤技術による省エネルギー対策に加え,油圧作動油基油自体の低密度化による圧力損失,配管抵抗の低減にも着目し,ISO VG32で一般的な鉱油系油圧作動油と比較し,5%の低密度化を実現した。この低密度化による省エネルギー効果は実際の油圧システムでも確認されている。
 2002年の消防法改正で,引火点250℃以上の油圧作動油は消防法上の取扱いが簡素化された。油圧作動油の引火点を250℃以上にすることは,火災のリスクを低減させるばかりでなく,油圧作動油自体が危険物から可燃性液体類に分類が変わることになり,操業コストの低減にも寄与することになる。省エネルギー対策としての低密度化は,油圧作動油の低粘度化により容易に達成されるが,それだけでは油圧作動油の引火点はかえって低くなってしまう。そこで同社は,油圧作動油基油の分子量分布に着目し,精密蒸留により分子量分布をせばめた新規炭化水素系合成油を油圧作動油の基油として採用することにより,高引火点と低密度を同時に達成している。また,精密蒸留した新規炭化水素系合成油の使用により,添加剤の溶解性が低下する問題点についても,同社は新たな配合技術の開発によって解決している。
 以上のように,高引火点・省エネルギー型油圧作動油の開発は,油圧作動油による油圧システムの省エネルギー対策と油圧作動油の高引火点化による火災リスクや操業コストの低減を同時に実現するばかりではなく,新規炭化水素系合成油の使用による添加剤溶解性の問題を解決した新たな配合技術には,今後の他の潤滑油配合技術開発への適用性の可能性も大きく,大いに期待される。
 よって,本技術は本会表彰規程第9条に該当するものと認められる。

 

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