奨励賞(東洋エンジニアリング賞)

大気圧非平衡プラズマを用いた新規な化学反応場の研究

 

野崎 智洋殿(東京工業大学大学院理工学研究科)

 野崎氏は非平衡プラズマの基礎的な研究を精力的に進め,低温プラズマに代表される非平衡化学反応場を積極的に利用して,熱による化学反応では生起しえない反応制御の実現を目指した研究を行っている。
 野崎氏は非平衡プラズマが生み出す新規化学反応場を用いることで,従来の触媒反応などでは実現不可能であった反応の選択性制御が可能であることを見出し,メタンの活性化をモデル反応として適用してきた。その結果,非平衡プラズマによって反応のトリガーとなるメチルラジカルなどの活性種を供給すれば,部分酸化反応はラジカル連鎖反応により常温常圧でも自発的に進行することを見出した。また,その際の消費エネルギーは,トリガーとなる活性種供給のためだけであり,従来に比してプラズマ形成に要するエネルギー消費を大幅に削減できた。さらに,非平衡プラズマ場とマイクロリアクターを併用することで,生成物選択性の制御が可能となることを見出した。
 一方で,非平衡化学反応場のキャラクタリゼーションを精力的に行い,発光スペクトルや超高速撮影などによりプラズマが創出する非平衡反応場のモニタリング技術を確立し,応用へと生かしてきた。従来,プラズマと化学反応を組み合わせただけの研究は数多く存在したが,野崎氏が行ってきた反応場の詳細なキャラクタリゼーションは,非平衡プラズマが生み出す新規化学反応場の理解のための重要な基礎的研究であり,その学問的な価値は高い。
 非平衡プラズマを生かした化学反応は,高付加価値製品への転換などをターゲットとしさらなる発展が期待される。その学理解明と応用展開の可能性を開く研究として,野崎氏の研究は重要な位置にあると評価でき,本会表彰規程第12条に該当するものと認められる。

 

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