奨励賞(千代田化工建設賞)

ナノ構造を制御したCr-V系酸化物触媒の創製とその触媒機能の解明

 

宍戸 哲也殿(京都大学大学院工学研究科)

 宍戸氏は,固体触媒表面に混在する複数種の活性サイトの触媒機能の解析を行うために,活性サイトの構造を制御した触媒を設計・構築し,活性サイトの構造とその触媒機能との相関について検討し,優れた業績を挙げてきた。
 まず,メソポーラスシリカ表面に局所構造を制御した遷移金属オキソ錯体を導入し,その活性点の構造,反応特性を系統的に解析した。特にクロムオキソ表面錯体が,二酸化炭素の存在下,アルカン脱水素反応を95%以上の高いアルケン選択性で高効率に進行させる優れた触媒であることを見出した。また,表面密度が異なるクロムオキソ表面錯体触媒を用いて,反応中に進行する活性サイトの動的構造変化と触媒機能の相関を初めて示した。これにより,触媒の活性低下要因を明らかにした。
 さらに,Cr-V二元系酸化物触媒を設計・合成し,ピコリン類の気相接触部分酸化反応に有効な触媒を開発した。触媒の結晶構造や第三成分の添加効果を検討した結果,単斜晶のCrVO4-T構造を持つ触媒が高い活性を示すことを見出し,孤立Vサイトが活性サイトであることを示した。また,触媒の活性に及ぼす微量添加物の効果や孤立Vサイトの酸化還元挙動に対する隣接水酸基の促進効果等を明らかにし,より高活性なVサイトを設計するとともに,このVサイトの動的変化をin-situ DRIFT,昇温還元法等の方法により詳細に解析し,反応機構を明らかにした。
 このように,宍戸氏は活性サイトの構造を制御した触媒を調製し,不均一触媒の活性サイト構造と触媒活性との相関を解明した。さらに,活性サイトの動的な構造変化を追跡することにより様々な反応に対して有効な活性サイトが必要とする性質について指針を示した。
 以上の研究成果は,ナノ構造を制御した触媒の設計指針を示し,今後の応用につながるものと判断され,本会表彰規程第12条に該当するものと認められる。

 

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