野口記念賞

メタンハイドレート資源の開発研究

 

メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム殿

 近年の原油価格変動によってエネルギー資源の安定供給の懸念はますます高くなり,石油・天然ガスのほとんどを輸入に頼る我が国にとって,国産エネルギー資源を確保することはエネルギー安全保障上重要なことである。1990年代から,日本周辺海域に相当量の非在来型エネルギー資源であるメタンハイドレートが賦存すると推測され,経済産業省(当時:通産産業省)が1999年度に静岡県御前崎沖で実施した基礎試錐「南海トラフ」により,メタンハイドレートがエネルギー資源として有望である可能性が示唆された。
 この結果を受けた経済産業省はメタンハイドレート開発研究を推進するため,2001年7月,「我が国におけるメタンハイドレート開発計画」を発表し,国家プロジェクトを立ち上げた。本開発計画は2001年度から始まる16年計画であり,フェーズTからVに分かれ,以下の研究達成目標が設定された。2007年度の基礎試錐「東海沖〜熊野灘」の成果を深く研究するためフェーズTの期間は2年延長された。
 1.日本周辺海域におけるメタンハイドレートの賦存状況と特性の明確化
 2.有望メタンハイドレート賦存海域のメタンガス賦存量の推定
 3.有望賦存海域からのメタンハイドレート資源フィールドの選択,並びにその経済性の検討
 4.選択されたメタンハイドレート資源フィールドでの産出試験の実施(2011年度まで)
 5.商業的産出のための技術を整備(2016年度まで)
 6.環境保全に配慮した開発システムの確立
 本開発計画のフェーズT(2001〜2008年度)は,新たに設立されたメタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(通称:MH21研究コンソーシアム)が業務を実施している。このコンソーシアムは(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(資源量評価分野),(独)産業技術総合研究所(生産手法開発分野),(財)エンジニアリング振興協会(環境影響評価分野)から構成され,これに民間会社,大学,研究所などが参画した産官学連携の調査・研究コンソーシアムである。
 フェーズTの主な研究成果は,東部南海トラフ海域の深海底下に分布するタービダイト砂泥互層の砂層に胚胎するメタンハイドレートを発見し,地震探査データを用いたメタンハイドレート飽和率の高いメタンハイドレート濃集帯の抽出手法およびメタンハイドレート資源量評価手法を確立しメタン賦存量を推定したこと,基礎試錐試料および室内実験を基にメタンハイドレート生産シミュレーターを開発し,「減圧法」が日本周辺海域のメタンハイドレート生産に適していることを提案したこと,カナダとの国際共同研究として実施したカナダ・マッケンジーデルタのメタンハイドレート層に対するフィールド試験で「減圧法」の有効性を実証したことである。環境影響評価分野においては,環境保全に配慮した開発システムの確立に向けて,海底面からのメタン漏洩などメタンハイドレート開発特有の環境リスク要因を抽出するとともに,センサーの開発,モニタリング開発を含めた環境影響評価手法の概念を構築した。
 さらに,メタンハイドレート開発研究の世界の先駆者として,論文発表207件,学会発表755件,特許登録2件,特許申請13件(いずれも2009年2月末現在)を数え,学術界および産業界に多大な貢献をなし,この分野における日本の立場を揺るぎないものとした。よって,本会野口記念賞表彰規程第2条1項に該当するものと認められる。

 

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