論文賞

CP-MAS 13C NMR法によるメタン‐エタン混合ガスハイドレートのガス組成およびケージ占有率評価

 

木田真人殿*1)*3),坂上寛敏殿*1),高橋信夫殿*1),八久保晶弘殿*1),庄子 仁殿*1)
鎌田 慈殿*2)*4),海老沼孝郎殿*2),成田英夫殿*2),竹谷 敏殿*2)
(*1北見工業大学,*2(独)産業技術総合研究所)

 メタンハイドレートは,低温・高圧下で水分子の結晶格子中にメタンが取り込まれている氷状の結晶で,非在来型の天然ガス資源として近年注目されている。メタンハイドレートの構造は,大小のケージが組み合わさった立体の網状となっており,そのケージ内にメタンが入り込んでいる。この結晶構造の詳細は既にX線回折測定によって明らかにされているが,実際のガスのケージ占有率については従来のラマン分光法に代わる新たな評価方法が必要とされていた。
 本論文は,固体試料の構造解析に有用なCP-MAS 13C NMRを用いて,メタン‐エタン混合ガスハイドレートのガス組成やケージ占有率を評価することを目的としたものである。一般に,CP-MAS 13C-NMRでは,データを定量的に取り扱うことは難しいことが多い。この点について,本論文ではNMR測定方法に工夫を加えて対応した。その結果,13C-NMRシグナルより算出したハイドレート中のガス組成がガスクロマトグラフィーでの分析値とよく相関することを見出した。
 そして,このように定量性を高めたCP-MAS 13C-NMRを適用することによって,ハイドレート中のガス組成だけでなく,大小のケージの占有率をも算出することが可能となった。このケージ占有率は,測定した13C-NMRシグナルに統計熱力学モデルを組み合わせて算出している。解析の結果,大ケージはガス組成によらずほぼゲスト分子によって占有されているのに対して,小ケージの占有率はガス中のエタン含有率が増加するにしたがい減少していくことが明らかとなった。この結果は,ハイドレートの大ケージがメタンよりもエタンによって優先的に占有されていることを示唆している。
 以上のように,本研究の結果は,メタン‐エタン混合ガスハイドレートについて,CP-MAS 13C-NMRによりガス組成だけでなく各ケージの占有率をも同時に評価しうることを示しており,今後のメタンハイドレート利用技術の発展に寄与するものと期待できる。よって,本論文は本会表彰規程第6条に該当するものと認められる。

[対象論文] J. Jpn. Petrol. Inst., 50, (3), 132(2007).

*3)(現在)(独)産業技術総合研究所
*4)(現在)(財)鉄道総合研究所

 

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