野口記念奨励賞

新規チタニア添加法による軽油超深度水素化脱硫触媒の開発

 

各務 成存殿(出光興産(株)技術部)

 環境規制がますます厳しくなり,自動車排ガス中のNOx・PMの低減のため,軽油中の硫黄分を低減する超深度水素化脱硫において,高活性を有する触媒の開発ニーズが飛躍的に高まってきた。各務氏は,軽油中の難脱硫性硫黄化合物の反応促進には,直接脱硫の反応経路より水素化経路での脱硫が有効であることに着目し,新規チタニア添加法による高活性軽油超深度水素化脱硫触媒の開発を行った。
 具体的には,水素化活性が高いNiMo系触媒においてチタニアをアルミナ担体に添加する方法により,活性金属と担体との相互作用を弱めて,触媒の水素化活性が高くなることを見出した。従来報告されている蒸着法や有機系のチタン化合物を用いるのではなく,水溶性チタン溶液を用いた独創的な手法を開発した。これらの成果は,既に特許として公表されている。これらの研究成果に基づいて,触媒の工業的な製造法を確立し,軽油硫黄分50 ppm以下への実用化実証試験を行った。これらの成果をその後の硫黄分10 ppm以下への触媒開発へ進展させた。
 次に,超深度水素化脱硫では窒素化合物の脱硫反応に与える影響が大きいことから,硫黄化合物と窒素化合物との共存系での反応を行い,詳細な反応速度解析を行った。その結果に基づき,担体との結合力が弱く水素化活性の高い触媒では窒素化合物の競争吸着の影響が大きくなる等,触媒反応機構に関する基礎的知見を得ることによって,触媒活性への担体の影響に関する理解を深めた。これらの成果は学術論文や学会発表等として公表された。
 各務氏は,軽油の超深度水素化脱硫において,単に基礎研究に留まらず,これらの成果を実用化できるレベルまで完成度を高め,製油所で実証した。また,得られた知見・開発手法は,今後も,より重質の原油処理に向けた高度な触媒設計への展開や,オイルサンド合成原油からの劣質な軽油留分の水素化脱硫処理に適した高い水素化活性を有する触媒設計への応用につながることが期待される。これらの成果から同氏の研究者としての高い能力が評価できる。
 以上の理由より,各務氏の研究業績は本会の野口記念賞表彰規程第2条2項に該当するものと認められる。

 

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