技術進歩賞

CO2冷媒を用いたヒートポンプ用冷凍機油の開発と実用化

 

出光興産株式会社殿

 本技術は,地球温暖化対策の一環として,従来の家庭用ガス給湯機のCO2排出量を抑制するために,新規に開発されたCO2冷媒使用ヒートポンプ給湯機に用いられている冷凍機油の開発とその実用化を行ったものである。
 CO2冷媒使用ヒートポンプ給湯機は,空調機器と同様の冷凍サイクルを持ち,サイクル内をCO2冷媒と冷凍機油が混合状態で循環する。従来のHFC冷媒の空調機器とは異なり,高温かつ高圧の超臨界領域で使用され従来の冷凍機油では対応できないため,新規な冷凍機油の開発が必要となった。
 候補者は,このような超臨界領域で使用される冷凍機油を開発するために,新規にCO2冷媒と冷凍機油の混合物性(相溶性・粘度特性等)の評価技術を開発し,冷凍機油の基油の選定に活用している。このCO2冷媒と冷凍機油の混合物性の評価技術についての特許を2件出願している。また,冷凍機油の品質設計のために,各種の基材や添加剤の各種性能(潤滑性・安定性・材料適合性等)の評価を行い,基油としてPAG(ポリアルキレングリコール)を選定し,添加剤として酸化防止剤と酸捕そく剤の選定を行った。なお,冷凍機油の品質設計関連でも特許を2件出願している。実用化に向けた需要家でのフィールド試験によって,新規冷凍機油の十分な信頼性が確認されたため,2001年にCO2冷媒使用ヒートポンプ給湯機用冷凍機油(商品名:ダフニーハーメチックオイルPZシリーズ)として上市した。2008年度の本冷凍機油の販売見込みは260 kLであり,国内で累計150万台のCO2冷媒使用ヒートポンプ給湯機に使用されている(2008年11月現在)。
 従来品であるHFC冷媒はCO2冷媒の1000倍以上の地球温暖化係数を持つことから,冷凍空調分野では,地球温暖化対策の切り札の一つとして,HFC冷媒からCO2冷媒への代替が進められている。本冷凍機油は,給湯機のみならず,CO2冷媒使用ヒートポンプ自動販売機やショーケースなどの業務用冷凍機にも使用されている。さらにはCO2冷媒使用の自動車用空調器や家庭・産業用空調機器の開発が検討されており,本冷凍機油の活用の範囲が広がることが期待される。
 以上のように,CO2冷媒使用ヒートポンプ給湯機用冷凍機油の開発と実用化は,家庭用給湯機のCO2排出を抑制するばかりではなく,今後,冷凍空調分野における冷媒代替の方向性を決める技術開発として先鞭をつける成果がある。
 よって,本技術は本会表彰規程第9条に該当するものと認められる。

 

表彰平成20年度表彰受賞者一覧|ページへ