技術進歩賞
高オクタン価型FCC触媒の開発と実用化
コスモ石油株式会社殿
財団法人石油産業活性化センター殿
財団法人石油産業活性化センター殿
本技術は,流動接触分解装置(FCC)から得られる,ガソリン基材の一つであるFCCガソリンのオクタン価を向上させることができるFCC触媒に関するものである。環境負荷低減のために製造されているサルファーフリーガソリンにおいては,FCCガソリン中の硫黄分を低減させる必要がある。そのためには,FCCガソリンの脱硫処理をする必要があるものの,その際にはオレフィンの水素化によるオクタン価の低下を並発するという問題がある。これに対して本技術は,FCC触媒の構成成分を最適化することにより,FCCガソリンのオクタン価を従来よりも向上させることができるFCC触媒の開発と実用化を行ったものである。
本技術は2007年から2008年にかけて日本国内に公開されている技術であり,その大きな特徴としては,FCCガソリンのオクタン価向上により,他のガソリン基材製造設備の運転に影響を与えることなく,サルファーフリーガソリンを製造できるとともに,CO2排出量も増大しないことに見られる。
本技術によるFCC触媒は,工業規模での生産に成功し,2006年よりコスモ石油(株)千葉製油所において実証化されており,実運転においてもFCCガソリンのオクタン価の向上が確認されていることも大きな特徴となっている。
FCC触媒においては,触媒を構成している希土類金属のイオン交換率を上げることによって,ゼオライトの水熱安定性が向上するとともに,水素移行反応性が高くなり重質留分の分解性も向上する。しかしながら,水素移行反応性の増大によりFCCガソリン中のオレフィンが水素化され,オクタン価が低下し,コーク収率が増大する問題が発生することが良く知られている。本技術においては,FCC触媒中の希土類金属置換率を可能な限り低減させ,FCCガソリン中のオレフィンを増大させることによりオクタン価を向上させた。また同時に,その際に失われる水熱安定性を保つために,ゼオライトの改良を実施し,さらに重質油の分解性を確保するためにアルミナを添加するなどの触媒設計をすることによって問題点を克服している。これらの点は,従来のFCC触媒に対して技術の進歩性が見られる。
さらに,日本の石油精製業界では,このような課題は触媒製造会社に解決を委ねるという姿勢である中で,今回の触媒開発においては,一つ一つの課題を地道に検討することによってその解決方法を見出し工業化につなげている。またその成果には,十分に有用性を認めることができる。
以上の点から,本技術は本会表彰規程第9条に該当するものと認められる。
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