技術進歩賞

石油製品中の水銀除去装置の開発

 

太陽テクノサービス株式会社殿
幾島 賢治殿(太陽石油(株)生産技術部)
長井 明久殿(太陽石油(株)生産技術部)
松本 伸一殿(太陽石油(株)生産技術部)

 本技術は,原油および天然ガスの生産プラント,石油精製および石油化学の製造プラントにおいて搭槽・配管などの損傷や触媒劣化の原因となり,安全性および環境問題からも対応が迫られている水銀を1ppb以下に除去できる実用化装置を開発したものである。
 本開発技術は,平成7年7月に国内特許出願し平成9年5月に特許登録,同9月に発行されたものと,平成10年1月に国内特許出願し平成16年12月に特許登録,17年3月に発行されたものが基本であり,石油中間製品中の微量水銀を水素化や加熱などの前処理することなく活性炭単体や硫化アルカリ金属類を担持した活性炭で除去することを特長としている。海外特許については米国,韓国,中国,オーストラリア,インドネシアを含む東南アジア諸国など10カ国で特許登録されており,さらに水銀除去に関する17件の国内特許は公開段階にある。
 一般的に石油中間製品に含有される水銀類は,金属水銀,イオン状水銀,有機水銀の形態で存在しており,これらを除去する方法として,従来技術では原料油を前処理工程で触媒による水素化分解で金属水銀に分解した後,Al2O3 担体に担持したモリブデン系の硫化物で吸着除去している。これに対して本技術の特長は,新たに開発された活性炭がイオン状水銀や有機水銀を常温で硫化水銀の形態で吸着することに着目して研究を重ね,水銀化合物,硫化アルカリ金属,硫化アルカリ土類金属および塩化物などの吸着量と反応活性に優れた高機能活性炭(AC-3)を開発した点にある。
 活性炭の開発は,活性炭原料,製造法における賦活ガスの種類や組成,賦活温度,賦活時間などの諸条件を検討することによって水銀除去に最適な平均粒径,比表面積,平均細孔半径,細孔容積,細孔分布を有する高機能性活性炭(AC-3)を得ることができ,この高機能性活性炭(AC-3)を用いることにより一基の吸着搭で前処理なく常温で石油中間製品中の水銀を1ppb以下に除去できるため,シンプルな装置構成で経済的な水銀除去装置が可能となった。 この水銀除去装置は既に国内の石油会社および石油化学会社の6社で10基以上が商業運転している。なお,環境対策では水銀を吸着した活性炭は外部委託して高温(600〜800℃)で焙焼し水銀を回収する方法で無害化している。
 本技術で使用する活性炭(AC-3)での水銀類の反応吸着機構については,実装置からのデータとモデル化合物を用いた確認実験から,水銀化合物が原料油中の硫化物や活性炭の官能基(Cl,S)などとの反応で中間化合物を経由し硫化水銀として吸着する機構を提案している。
 以上,開発された前処理を必要としない石油製品中の水銀除去装置は,国内はもとより,需要が高まっている海外の中小の原油および天然ガス生産設備への適用も可能であり,大きく期待できる。よって,本技術は本会表彰規程第9条に該当するものと認められる。

 

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