奨励賞(ジャパンエナジー賞)
二酸化炭素を原料および媒体とする有用化成品合成のための分子触媒に関する研究
崔 準哲殿((独)産業技術総合研究所 環境化学技術研究部門)
崔氏は,環境に調和した化学合成技術の創製において重要な分子触媒を用いた触媒反応プロセスの構築を目的とした基礎研究において優れた業績を挙げてきた。崔氏が研究対象とした化学合成プロセスは,持続可能な社会の実現や地球温暖化ガスの再資源化という観点からも極めて重要なものである。
崔氏の研究は,反応性が低いためこれまで極めて困難であると考えられてきた二酸化炭素やメタンを有用な化学品へと直接変換する反応に関するものである。その中で特に,分子触媒の設計と特殊反応場の利用の両面において独自なアプローチを行い,高収率合成を実現した点が高く評価される。同時に,反応中間体の単離とその構造解析を通して反応素過程や触媒反応機構を解明している点も高く評価される。
具体的な業績として,二酸化炭素とメタノールを原料とした脱水型反応による炭酸ジメチル合成反応において,熱力学的平衡制約,生成物である水による触媒劣化のために収率向上が困難とされていた反応プロセスに対して,新規なスズ触媒の設計,高密度二酸化炭素反応場の利用,再利用可能な脱水剤の利用により高収率合成に成功したことが挙げられる。二酸化炭素を原料としたウレタンおよび環状エステル合成についても顕著な業績を挙げており,二酸化炭素をホスゲン代替とした低環境負荷型化学合成への貢献が期待できる。また,メタンのアセトアルデヒドへの変換反応,アルカンの脱水素反応,パーフルオロオレフィンのヒドロシリル化反応において,超臨界および高密度二酸化炭素の溶媒としての有効性を明らかにしてきた。これは,ハロゲンや有機溶媒を用いないグリーン化学を目指した反応プロセス開発への発展を期待させるものと評価される。
以上の研究成果は,環境に調和した化学合成・触媒反応プロセスの構築に向けて寄与するものと判断され,本会表彰規程第12条に該当するものと認められる。
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