学会賞(表彰規程第3条2項に該当するもの)
ライトナフサからの芳香族製造用ハロゲン修飾Pt/L型ゼオライト触媒の開発と実用化
出光興産株式会社殿
Chevron Phillips Chemical Company LP殿
Chevron Phillips Chemical Company LP殿
1983年のナフサの輸入自由化に際して,国内ナフサの価格低下が懸念されている状況下,ナフサの付加価値向上策の一つとして,ライトナフサからベンゼンやトルエンなどの芳香族化合物を製造する技術が注目されていた。しかしながら,それらの技術の中で,ライトナフサからベンゼンやトルエンなどの芳香族化合物を直接製造する技術として当時見出されていたPt/L型ゼオライト触媒は,芳香族選択性は高いものの活性が低く,寿命も短いため実用化の可能性が低い状況であった。
出光興産(株)では,芳香族化合物を直接製造するPt/L型ゼオライト触媒に着目して,長年培ってきた触媒表面修飾技術を生かして,Pt/L型ゼオライト触媒をハロゲン(Cl,F)で処理することによって,高活性(約9倍),長寿命(2倍以上)を有する触媒を開発するに至った。
この高活性化および長寿命化の原理を触媒物性評価による要因解析で明らかにしている。従来のヘビーナフサ接触改質(リフォーミング)プロセスで使用されているPt/Al2O3触媒は,Ptの脱水素活性点およびアルミナの酸点による二元機能でパラフィンの芳香族化反応が進行するのに対して,Pt/L型ゼオライト触媒は炭素析出を促進させる強い酸点が存在せず,Pt上のみで反応が進行する単元機能触媒である。この触媒をハロゲン(Cl,F)で処理することによって,Pt粒子が高分散化して外表面に多く分布した構造となること,担体との相互作用によってPtが電子リッチになり活性が向上し劣化原因となる炭素析出を抑制することで長寿命であることを明らかにしている。
また,この触媒開発における高活性化および長寿命化の成果は,工業所有権として確立している(現在までに登録されている特許は20件に上る)。
さらに実用化に向けては,米国Chevron Phillips Chemical社と共同で触媒の製造のスケールアップや触媒再生などの技術開発(Aromax®II触媒),および触媒機能を十分に発揮するためのプロセス開発を行い,一般にハロゲン触媒の課題と考えられている装置の腐食防止やハロゲンの漏洩防止対策についても技術確立を行い大型商業プラントでの操業につなげている。
商業運転はサウジアラビアにおいて1999年から始まり,高い競争力を背景に今日まで着実に実績を積んでいる。近年,米国やスペインの商業化装置へも適用され,今後もさらなる展開が期待されている。
開発した触媒を用いた本プロセスは,用途の限られていたライトナフサから,石油化学基礎原料であるベンゼン,トルエンを直接製造するとともに,高収率で水素を製造するプロセスであり,新規な触媒とそれを用いるプロセスとして完成の域に到達している。よって,本会表彰規程第3条2項に該当するものと認められる。
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