野口記念奨励賞

ジルコニア系固体酸触媒を用いたエステル交換反応によるバイオディーゼル製造法の研究

　

　植物性油脂とアルコールを原料として，エステル交換反応により合成される脂肪酸モノエステルは，燃焼によるCO₂排出量がゼロとみなされるバイオディーゼルとして注目されている。しかし，均一系塩基触媒を用いた従来の合成プロセスでは，原料油中に含まれる遊離脂肪酸の除去前処理が必要なこと，生成油と触媒の分離工程が必要なことが問題となっている。
　古田氏はこれらの問題を解決するため，固体酸触媒を用いた固定床プロセスの開発を試みた。その結果，固体超強酸であるWO₃/ZrO₂，酸触媒と塩基触媒の二面性をもつAl₂O₃/ZrO₂およびTiO₂/ZrO₂が，大豆油とメタノールからの脂肪酸モノエステル合成に対し，長時間にわたり高い収率を与えることを見出した。原料アルコールとして，メタノールよりも反応性が低いとされるエタノールを用いても，同程度のモノエステル収率が得られ，CO₂排出量削減にさらなる効果が期待できる。また，これらの触媒はオクタン酸のメタノールによるメチルエステル化にも高活性を示した。このことは，遊離脂肪酸を多く含む廃食用油などを原料とするバイオディーゼル製造において，遊離脂肪酸の除去前処理が不要であることを示している。
　これらの成果は，従来の均一系塩基触媒プロセスがもつ問題を解決し，CO₂排出量削減に有効なバイオディーゼルを，環境負荷の少ない固体酸触媒プロセスで大量製造する可能性を与えるものであり，今後の発展が大いに期待される。
　よって，古田氏の研究業績は本会野口記念賞表彰規程第2条2項に該当するものと認められる。

 

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