学会賞(表彰規程第3条2項に該当するもの)
ZDTP代替技術による長寿命および触媒低被毒性エンジン油の開発
五十嵐仁一殿(新日本石油(株)研究開発本部 中央技術研究所 潤滑油研究所)
小宮 健一殿(新日本石油(株)研究開発本部 中央技術研究所 潤滑油研究所)
八木下和宏殿(新日本石油(株)研究開発本部 中央技術研究所 潤滑油研究所)
内田 悟殿(新日本石油(株)潤滑油事業本部 潤滑油販売部)
小宮 健一殿(新日本石油(株)研究開発本部 中央技術研究所 潤滑油研究所)
八木下和宏殿(新日本石油(株)研究開発本部 中央技術研究所 潤滑油研究所)
内田 悟殿(新日本石油(株)潤滑油事業本部 潤滑油販売部)
環境への配慮は全ての技術分野で必須の課題であるが,エンジン油も例外ではない。本開発技術は,これまでエンジン油に必須の添加剤として考えられていたジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDTP)を他の新規添加剤に置き換え,従来から用いられている添加剤との配合技術の開発により,新たな高性能エンジン油の開発を成功させたものであり,環境問題に大きく貢献する技術である。
ZDTPは自身に含有されるリン,硫黄元素により摩耗防止剤として優れた機能を発揮すると同時に,その硫黄に由来する過酸化物分解能を発揮し優れた酸化防止剤としての機能も発揮する。しかし,同時にその硫黄が原因としてエンジン油中のZDTP自身の消耗の早期化,エンジン油の清浄分散性能の早期低下が引き起こされることから,特に清浄性の観点からのエンジン油の長寿命化の阻害要因になっていた。さらに,ZDTPに含有される硫黄,リン,亜鉛が原因となり,排出ガス浄化触媒の被毒問題,DPFの目詰まり問題等を引き起こすことから,エンジン油におけるZDTP添加量の低濃度化が急務となっている。
エンジン油の環境配慮の3要素である長寿命化,省燃費化,低灰化はZDTPを用いる既存技術ではそれぞれがトレードオフの関係にあり高性能化の障害になっていた。本技術は,ZDTPを全く用いず硫黄元素を全く含まない新たな添加剤(アルキルリン酸亜鉛)および共存させる他の添加剤の配合技術を開発することにより,全ての機能を同時に満足させることができるようになったものであり,エンジン油自身および排出ガス浄化触媒等の長寿命化を達成し,エンジン油の環境配慮性能を飛躍的に向上させることが可能となった技術である。
市場においても本開発技術を活用したガスエンジン油では,既存技術では到達不可能なほどその寿命を延ばしている。このことは,機器メンテナンスの負担を下げることにもつながり,環境に優しいガスヒートポンプシステム,コジェネレーションシステムの普及に貢献するなど実績も積んできている。また,この技術は限られた機器用のエンジン油ではなく,様々なエンジン油に応用可能な次世代エンジン油の基本技術でもあることから,自動車等の輸送機器用のエンジン油についても適応可能技術であり,国内CO2排出量の2割を占める輸送部門の環境保全への貢献が期待できる。エンジン油への環境配慮要求が今後さらに高まることは容易に想定できるが,ZDTPの配合を前提とした既存技術では性能向上に限界があり,本開発技術は普遍性を持つ次世代技術として評価される。よって,本会表彰規程第3条2項に該当するものと認められる。
|表彰|平成19年度表彰受賞者一覧|ページへ |