技術進歩賞
間接法ジメチルエーテル製造プロセスの商業化
Gas to Liquid(GTL)技術の一つとして,クリーンな軽油代替燃料あるいはLPG代替燃料としてジメチールエーテル(DME)がある。軽油代替としては,セタン価が高く着火性が良く,含酸素化合物のためにすすの発生も少ないなどの特性を有しており,環境面からも期待されている。LPG代替としては,既存のLPGボンベに充填し流通させることができるなどの特徴がある。DMEはすでにスプレー用の噴射剤として,世界で年間15万トンが生産されているが,燃料用としては大型のプラントが必要となる。本技術は燃料用の大規模DME生産のための技術に関するものである。
DME製造技術としては,既存のメタノール合成技術と生成したメタノールを別の反応器で脱水縮合する間接法と,合成ガスから反応器内でメタノール合成と脱水縮合を同時に行う直接法がある。直接法では反応器が1基ですみ,建設コストが削減できDMEの製造に特化されるのに対し,間接法は反応器が2基必要となるがメタノールとDMEが併産できるために,運転の自由度が増すなど需給の調整が可能となる。さらに,メタノール合成プラント建設コストに約15%上乗せすることで,DME製造設備を付与できるなど建設費的にも大きな負担にならないなどの利点も有している。
本技術は,既存の自社技術である高性能水蒸気改質触媒,高い実績を有するラジアルフロー型メタノール合成プラントに,新たに開発したナトリウム含有量を低減させかつ特定の細孔径分布を有するアルミナ脱水縮合触媒を組み合わせたものである。特許実施例によると,アルミナ中のNa2O含有量を0.02%まで低下させると,反応圧1.0 MPaにおいてメタノール転化率77%と高い値を得ているが,最適な細孔径分布を有しないアルミナの場合はNa2O含有量を0.04%まで下げても転化率が57%まで低下するなど,最適な細孔径分布を有する低ナトリウム含有アルミナの開発が一つのキー技術となっている。
直接法と間接法を技術的に比較すると,直接法の長所としては,生成したメタノールがDMEとして除去されるために,平衡がメタノール側に移行し合成ガスの転化率を高く保つことが可能となる。しかし,メタノール合成,脱水縮合のいずれも発熱反応であるために反応器内での熱の除去がキー技術の一つとなり,直接法ではCO存在下に水も生成するために,発熱反応の水性ガスシフト反応も起こり,さらに多くの熱除去が必要になる。これらの観点から,間接法は直接法に対して対等それ以上のプロセスであることが推察される。
受賞者は中国において年1万トンの実証化プラントを建設し,2003年3月より稼働させ,その実績に基づき年11万トンの商業プラントを受注し,運転を2006年3月より開始し,順調に稼働している。さらに,中国において2基建設中で,1基は合成ガスに石炭を用いる予定であり,エネルギー源の多様化に資するなど将来性のある技術である。
よって,本技術は本会表彰規程第9条に該当するものと認められる。
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