学会賞(表彰規程第3条1項に該当するもの)[学術的]

生物工学的手法によるメタノール生産ならびに光水素生産プロセスの開発研究

大倉 一郎殿(東京工業大学大学院生命理工学研究科 教授)

 大倉氏は,一貫して酵素や微生物を用いる生物工学的研究を行い,資源・エネルギー・環境問題解決に役立つバイオ技術の開発に向けた基礎的研究において数多くの成果を挙げている。以下に同氏の業績をまとめる。

 第一は,水溶液中で有効に働く太陽エネルギーの水素エネルギーへの変換システムの開発研究である。光エネルギーを化学エネルギーに変換する光触媒としてポルフィリン等の光増感剤に注目し,ビオローゲンなどの電子伝達体を結合した高機能型増感剤を開発,光励起状態の光増感剤から電子伝達体への分子内電子移動を明らかにした。また,水溶性ポリマーに連結した増感剤やチトクロームc3 などの電子伝達体を連結した増感剤を開発し,亜鉛やルテニウムを中心金属とする金属ポルフィリンと電子伝達体の結合によって電子伝達の効率化を達成している。さらに,この増感剤とヒドロゲナーゼ等の水素発生酵素を組み合わせることにより,効率的な光水素発生系を世界に先駆けて構築した。

 第二は,酸素化酵素メタンモノオキシゲナーゼによるメタンのメタノールへの選択的酸素化の研究である。2核鉄を活性中心とするメタンモノオキシゲナーゼsMMOの研究は進んでいるが,銅を活性中心として含む膜結合型pMMOに早くから着目し,先ずメタン資化細菌Methylosinus trichosporium OB3bからのpMMOの抽出分離を行った。銅のほかにわずかな鉄を含むpMMOの活性中心の構造が色々議論される中で,酸素化活性中心としての銅と電子伝達体としての銅の存在を明らかにし,その後のpMMO研究の進展に著しく貢献した。また,資化細菌を用いたメタンからメタノールを生産するプロセスの開発においては,資化細菌内に存在するメタノールデヒドロゲナーゼがメタノールを酸化するという問題があったが,シクロプロパノールがメタノールデヒドロゲナーゼの阻害剤として有効であることを見出し,メタンをメタノールへ選択的部分酸化する新しい方法を開発した。

 これらの成果に基づき,発生する水素を還元剤として用いる炭酸ガスからメタノールへの変換プロセスと,上記第二のプロセスを効率的に連結したメタノール生成プロセスの開発が提唱されており,これにより高収率でメタノールが得られる工業的にも有用なプロセスの開発が期待できる。

 以上のように大倉氏は,グリーンプロセスを用いた再生可能なエネルギー生産システム開発において独創的かつ先駆的な研究を展開し,その研究業績は顕著である。よって,本会表彰規程第3条第1項に該当するものと認められる。

 

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