学会賞(表彰規程第3条2項に該当するもの)[工業的]

接触改質プロセスにおける酸化亜鉛系吸収剤を用いた気相塩素除去技術の開発

 連続触媒再生方式の接触改質装置では,触媒性能維持のために塩素化合物が投入される。そのため,接触改質装置から排出されるオフガスには塩化水素や有機塩素化合物が含まれ,後段装置での腐食を引き起こすことがある。このような問題を回避するためには,オフガス中の塩素化合物を除去することが必要である。

 従来はアルミナを主成分とする塩素吸収剤が使用されていたが,長期に使用すると塩素化合物,特に有機塩素化合物が下流にリークし,後段の装置腐食およびそれに起因するトラブルが頻発した。受賞者らはその原因について検討をしたところ,(1)アルミナ系吸収剤は,無機塩素はよく吸収するが有機塩素化合物の吸収能力が低いこと,(2)長期使用により塩化アルミニウムが生成し,これが逆に有機塩素化合物の生成を助長することを見出した。

 受賞者らはアルミナ系に代わる新規塩素吸収剤の開発に着手した。当時はアルミナ系とともに,酸化亜鉛系吸収剤の塩素吸収能力も高く評価されていたが,塩素吸収後には潮解性のある塩化亜鉛となり,吸収層の圧損発生が危惧されていた。そこで,潮解性を抑制するべく酸化亜鉛に多孔性無機物質を添加し,その孔内に塩素吸収により生じた塩化亜鉛を閉じ込めることを計画した。いくつかの試行錯誤の結果,ケイソウ土が最適な多孔性無機物質の一つであることを見出し,酸化亜鉛含有量は30〜50%が適正であることを確認した。このようにして開発された酸化亜鉛/ケイソウ土系吸収剤は,潮解性および崩壊性が十分に改善されており,長期間の運転にも耐えられるようになった。ケイソウ土の孔中に塩素吸収により生じた塩化亜鉛を閉じ込めるという発想には独創性があり,ケイソウ土等の添加による吸収剤の細孔容積制御が本技術を実現させるためのキーポイントとなった。

 本技術の特徴は,(1)無機塩素と有機塩素とが同時に吸収できること,(2)塩素の吸収能力が高いこと,(3)塩化亜鉛の潮解性や崩壊性が十分に改善されていること,(4)長期間にわたり安定に運転できることである。これらの性能が高く評価された結果,ここ数年間で国内外の接触改質装置への本技術の適用が急増している。

以上のことから,本業績は本会表彰規程第3条第2項に該当するものと認められる。

 

表彰平成18年度表彰受賞者一覧|ページへ