野口記念奨励賞

129Xe-NMRを用いた石油精製触媒の構造解析に関する研究

萩原 和彦殿(コスモ石油(株)中央研究所 副主任研究員)

 石油精製プロセスに用いられる触媒の高機能化のためには,性能を決定する触媒構造の詳細解析が重要である。そのための構造解析手法は過去数多く研究されてきたが,最近では新規手法で新たな切り口を切り開いた例は少なくなってきている。

 萩原氏は,新たな触媒分析評価法として,ゼオライト等のミクロ多孔体の細孔構造に関して独特な情報を与える129Xe-NMR法に着眼した。当該手法を,まずFCC触媒の水蒸気存在下の熱処理においてY型ゼオライトの構造破壊過程解析に応用し,分子レベルでの崩壊モデル構築に至った。さらに,CoMo系の脱硫触媒に当該手法を適用した。その結果,CoMo系脱硫触媒はアルミナ担体からなっておりミクロ細孔は存在しないが,MoやCoMoから形成される特殊な硫化物構造がXe分子との相互作用によりケミカルシフトを変化させることを見出した。このケミカルシフトと触媒の脱硫活性との間に相関関係を見出し,脱硫活性の新規迅速なスクリーニング法に使える可能性も見出した。

 このように,129Xe-NMR法をゼオライトからなるFCC触媒はもちろん,アモルファスである脱硫触媒の活性金属状態解析に適用できることを見出したことは,触媒分析技術の今後の展開に大きく貢献するものと期待される。

 以上の理由により,萩原氏の研究業績は本会野口記念賞表彰規程第2条2項に該当するものと認められる。

 

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