技術進歩賞

改質した硫黄を用いた新規コンクリートの開発

 本技術は,溶融状態の硫黄にオレフィン系添加剤を反応させることにより高分子化させることで改質硫黄とし,その後,石炭灰と混合し硫黄中間資材を製造しこれをコンクリート原料とする,新規硫黄固化体の開発に関するものである。

 わが国の石油精製業は,これまで環境保全のための製品製造に注力しており,その一つの方策として燃料製品の高度な脱硫を実施している。この際に副生する回収硫黄量は増加しているが,国内需要は年々減少傾向にあり,余剰分を国外輸出により対応している。今後途上国を中心とする諸外国においても燃料等の環境規制強化により回収硫黄の生産量が増大することが見込まれており,硫黄は世界的にも余剰基調にある。

 本技術は,このような背景から副生硫黄原料の大量消費商品となりうる硫黄固化体の開発に成功したものである。過去,副生硫黄を原料とする商品開発は種々行われていたが,大きな成果が挙げられなかった理由の一つとして,国内における単体硫黄の危険物指定が挙げられる。本技術においては,添加剤を混合した改質硫黄と石炭灰を混合した硫黄中間資材の開発により,製品中間体の非危険物化を実現することで,流通を容易にした点が優れている。また,本処理により,硫黄酸化細菌に対する耐久性を向上し,難燃性を付加させた点にも新規性が認められる。さらに,硫黄中間資材の原料として各種骨材を利用することが可能であり,骨材として種々の副産物・廃棄物等を大量消費が期待できる点も評価できる。

 本技術は,使用する骨材の種類により,圧縮強度,静弾性係数,密度等の材料特性が相違することが特徴であるが,これらの値から判断して,コンクリート構造物の代替材料として十分使用可能である。通常のコンクリートと比較して,製造時のCO2排出量が低減されるほか,海水中での高い耐久性を示すこと,有害物質の溶出量は土壌環境基準を満足していること,海洋生物の着生性において優位性があること,高い耐酸性や耐摩耗性を示すこと等の利点が実証されている。また,供試体の温度の上昇に伴い圧縮強度や静弾性係数が低下するというコンクリートには見られない温度依存性についても検証されている。これらのことから,本技術は,コンクリート構造物の代替材料として十分な使用性能を有しているものと判断できる。

 なお,高温度での施工,コストなど若干の課題もあるが,冷却されると直ちに強度が発現されること,副生硫黄の消費への貢献が大きいことから,問題にならないと思量される。

 よって,本技術は本会表彰規程第9条に該当するものと認められる。

 

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