技術進歩賞
製油所余剰汚泥削減プロセスの開発
本技術は,製油所の活性汚泥排水処理設備から発生し,製油所廃棄物の約50%を占める余剰汚泥を安価に,大幅に削減するプロセスに関するものである。コスモ石油(株)は1999年より本プロセスの技術開発に着手し,2001年度より(財)石油産業活性化センターと共同でコスモ石油(株)坂出製油所において実証化試験を行い,国内で初めてそれに成功した。
本プロセスは,余剰汚泥を削減するために余剰汚泥を可溶化し,再び活性汚泥排水処理設備へ戻すものであり,可溶化方法として摩砕機による物理処理とアルカリ薬剤の処理を併用し,かつ最適な汚泥の循環方法を見出したところに特徴がある。高速回転せん断型摩砕機による物理処理では20%程度しか可溶化せず,アルカリ薬剤による処理だけでは30%程度しか余剰汚泥は可溶化しないが,両処理を併用することで40〜50%という高い可溶化率を短時間で達成できることを見出した。この基礎検討結果を踏まえ実施された坂出製油所における約1年間の実証化試験では,約50%の汚泥削減に成功するとともに,条件次第では80%以上の削減が可能であることを明らかにした。
従来,余剰汚泥を削減する方法として,オゾン処理,嫌気消化や高熱性細菌を用いた生物的処理,ビーズミル処理,超音波処理,高速回転ディスク法および酸化剤等のケミカル処理などがあるが,本プロセスは従来法と比べてシンプルで安価に余剰汚泥を可溶化ができる特徴を有する。
本プロセスは,坂出製油所における実証化運転の成功を踏まえ,2005年5月にコスモエンジニアリング(株)から正式に販売され,国内食品工場および化学工場,公共下水施設等のみならず,海外企業からも具体的な引き合いを受けており,既に大手化学メーカーへ実機を納入し2005年9月末より試運転を開始するなど,市場実績を積んでいる。
一方,本プロセスで使用するアルカリ薬剤は製油所内で発生するアルカリ性廃棄物(硫黄回収装置やスイートニングプロセスより発生)を有効利用することができ,製油所のゼロエミッション,廃棄物のクローズド化処理に大きく貢献することが期待され,その経済効果は大きい。
なお,本技術は2001年に1件,2003年に2件など複数の特許が出願されており,2003年石油学会中国・四国支部講演会や2005年石油学会盛岡大会などで発表されるとともに,2005年石油学会論文誌(J. Jpn. Petrol. Inst.)に2報掲載されている。
よって,本技術は本会表彰規程第9条に該当するものと認められる。
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