技術進歩賞

はっ水処理活性炭を用いた硫酸副生型排煙脱硫装置の開発

 本技術は,火力発電設備や石油関連設備などから排出される硫黄酸化物の除去方法および装置に関するものである。排ガスからの硫黄酸化物の除去には,従来からアルカリ吸収液による石灰石‐石こう法が多く用いられてきた。これに対して本技術は,硫黄酸化物を触媒により酸化し,希硫酸として分離回収する硫酸副生型排煙脱硫装置の開発と実用化を行ったものである。

 本技術は日本では1997年5月に特許出願され,2004年6月に特許登録,同9月に発効されたもので,海外においても多くの国で特許登録されている技術であり,その大きな特徴としては省エネルギー,容易な運転,装置の簡素化を実現するために開発した活性炭系触媒にみられる。

 本技術による触媒酸化法硫酸副生型排煙脱硫装置は2003年3月に商業1号機が,2006年8月に商業2号機が運転を開始していることから十分に実用化・工業化された技術となっている。また本装置は,現在,数多く採用されている石灰石‐石こう法排煙脱硫装置と比較して構成機器点数が少ないこと,類似技術であるSulfacid法排煙脱硫装置と比較して高い脱硫性能が再生操作なしに長期間維持できることも大きな特徴となっている。

 活性炭系触媒による脱硫原理は1970年代に提案されたSulfacid法と同じで,排ガス中の硫黄酸化物を活性炭系触媒に吸着させ,排ガス中の酸素による酸化,および排ガス中の水分との反応から希硫酸として回収する技術であるが,Sulfacid法では生成する希硫酸が徐々に触媒上に蓄積していくために高い脱硫性能を長期間維持できず,工業レベルでは普及しなかった。しかし,本技術で開発された活性炭系触媒では,活性炭にはっ水処理を施すことで,触媒上に生成した希硫酸を連続的に触媒から速やかに脱離させることができ,これにより高い脱硫性能を長期間に渡って持続できており,従来のSulfacid法には見られない進歩性がある。

 活性炭はっ水処理の最大の特徴は,硫黄酸化物の吸着活性点を残して希硫酸が蓄積する部分にはっ水化処理を施すことにある。そのために原料活性炭の全表面をはっ水化処理するのではなく,細孔径の大きなマクロポアをはっ水化処理し,高い脱硫性能の長期間にわたる維持を実現している。このことは,今後同種の装置の性能向上についての知見を与えるものであり,技術としての波及効果を内在している。さらに,原料活性炭を特定の粒径範囲まで粉砕した後にはっ水化処理を施し再度成形する,といった独自の触媒製造方法の考案により,排煙脱硫装置として必要となる低圧力損失の触媒形状への成形を可能にしており,実用化技術としての有用性を認めることができる。

 よって,本技術は本会表彰規程第9条に該当するものと認められる。

 

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