奨励賞(山武賞)
新規非平衡放電を用いる炭化水素からの水素製造に関する研究
関根 泰殿(早稲田大学ナノ理工学研究機構 講師)
関根氏は,水蒸気改質やドライリフォーミング,カップリング,部分酸化による水素,合成ガス製造への放電による電子照射効果の基礎的研究において優れた業績を挙げてきた。現在,水素は次世代のエネルギー媒体として,温和な条件での合成法の確立が期待されているが,同氏は電子照射で炭化水素を活性化することに着目し,一般的に高温が必要と考えられている改質反応が常温・常圧でも進行できるという興味ある現象を見出し,これまでに例のない常温での水素製造プロセスを提案している。これらの成果は今後のエネルギーの有効利用を考えると極めて重要な成果と考えられる。特に,高効率化の達成のために,電子をパルス化してエネルギー投入量を低く抑えるなど,放電プラズマの工業的な応用を検討した点が高く評価される。また同氏は,これまでに放電と触媒の併用が高いシナジー効果を発揮することを明らかにするとともに,通常の触媒反応による水蒸気改質でも担体の酸化還元特性を生かした新規な触媒系での水素製造を検討し,顕著な業績が認められる。
具体的にはメタンの酸化の研究において,反応中へ高温フィラメントを配置した温度勾配場が有効であることを見出し,ここから放電による各種炭化水素の活性化を検討し,メタン,プロパン,C6炭化水素,ジメチルエーテル,アルコールなどの各種燃料が水の存在下,常温・常圧という特異な条件下で,非平衡放電によって水蒸気改質反応を生じさせ,70%程度の高濃度の水素を含むガスが得られることを見出した。また,本プロセスはドライリフォーミングやオートサーマルリフォーミング,カップリングなどのプロセスでも有効なことを示している。これらの成果は今後,電子励起による常温・常圧での炭化水素の活性化・転換において新しい展開を導くと期待され,放電プロセスの工業的な応用における大きな寄与を行ったと評価される。
以上の研究成果はエネルギー・環境分野で今後重要になる触媒プロセスに多大な寄与を与えると判断され,本会表彰規程第12条に該当するものと認められる。
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