技術進歩賞

PCB混入絶縁油を使用する変圧器等の洗浄技術の開発

日陽エンジニアリング株式会社殿,株式会社ジャパンエナジー殿

 日陽エンジニアリング(株)と(株)ジャパンエナジーの本技術は,PCB(ポリ塩化ビフェニル)混入絶縁油を使用した変圧器等の容器の解体・分離装置,無害化のための洗浄装置,洗浄剤よりPCB混入絶縁油を分離・回収する溶剤再生装置について,それらの技術の開発と実用化を行ったものである。

 平成13年6月に制定された「PCB廃棄物の適正な処理に関する特別措置法」により,保管されているPCB廃棄物の期間内処理義務(平成28年7月まで)が保管事業者に課された。対象は変圧器等に封入されているPCB混入絶縁油と,絶縁油を抜き取った後の容器および内部部材である。しかし,PCBが付着している容器や内部部材を安全かつ経済的に処理する技術は実用化されていなかった。本技術が特別措置法施行後の容器処理施設の1号機として採用されたことは,当該技術の新規性を示すものであり,またその後も3件の施設の建設(うち1件は稼動中)を行っており,PCB容器処理技術での先行性を示すものである。

 容器処理の技術としてはこの洗浄方式以外に真空加熱蒸発法があり,どちらの技術もPCB混入絶縁油を分離・回収する方式である。低濃度PCBの処理では一部で真空加熱蒸発法が採用されているが,高濃度PCBの処理においては洗浄方式,または洗浄方式と真空加熱蒸発方式の組み合わせで行われており,洗浄方式が多く採用されている。

 本技術は対象となる変圧器等の構造と部材の材質・形状を詳細に検討し,解体・切断・分離の方法や各種の部材に対して統一的な洗浄方法を確立したことにその有用性がある。

 特徴としては,(1)コイル切断/コイルと鉄心の分離/洗浄が困難な鉄心の切断と曲がりを矯正し,洗浄の最適化を図ったコア処理専用自動化装置の開発,(2)日本初となる大量洗浄が可能なPCB専用の洗浄装置の実用化,大容量超音波洗浄素子の採用による部材の重なり部分も清浄化する洗浄装置の開発,(3)洗浄剤の効率的な回収に加え,PCB混入絶縁油を95%以上に濃縮し,下流のPCB分解プロセスに支障なく供給する溶剤再生装置の開発が挙げられる。さらに,本技術は洗浄回数を1回洗浄から複数回洗浄に変えることにより,低濃度から高濃度PCBまでの容器処理に適用でき,両処理施設の建設・運転の実績を持っている。

 開発された技術は,「多段洗浄方法及び装置」等7件の特許として申請されている。

 以上の点から,本技術は本会表彰規程第9条に該当するものと認められる。

 

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