学会賞(表彰規程第3条2項に該当するもの)[工業的]

FCCガソリン選択的脱硫プロセスの開発

畑中 重人殿(新日本石油(株)研究開発本部 中央技術研究所 燃料研究所 所長)
守田英太郎殿(新日本石油(株)研究開発本部 中央技術研究所 実用試験グループマネージャー)
財団法人石油産業活性化センター殿

 ガソリンの低硫黄化は,環境負荷低減要求の高まりを受けて喫緊の課題であり,日本では2008年1月より硫黄分10 ppm(サルファーフリー)の規制が実施される。日本では,ガソリン基材としてFCCガソリン(CCG)が50%程度用いられている。このCCGは他のガソリン基材と比較し,硫黄分が極めて多く,ガソリンのサルファーフリー化を実現するためには,CCGの低硫黄化が不可欠である。しかし,従来技術でCCGを脱硫するとオレフィンの水素化によりオクタン価が大きく低下するという問題があった。畑中氏らは,この問題に対し,触媒およびプロセスの開発により,従来技術ではなしえなかった脱硫反応の促進とオクタン価低下抑制の同時実現を可能にしたプロセス,ROK-Finerを開発・工業化し,国産技術によるCCGの選択的水素化脱硫によるサルファーフリーガソリンの製造に成功した。ガソリンのサルファーフリー化により,リーンバーン直噴エンジン車に搭載されるNOx吸蔵触媒の再生頻度低減に伴うCO2排出量削減が期待できる。また,オレフィン水素化抑制により製油所での水素消費量低減も見込まれている。

 畑中氏らは,Co-Mo/Al2O3触媒では水素化脱硫活性サイト,n-オレフィンの水素化活性サイト,イソオレフィンの水素化活性サイトが異なると推定し,Co添加比率の最適化およびイソオレフィンの水素化活性サイト上に強制的にコークを析出させるコーキング処理やアルカリ添加等による脱硫選択性の飛躍的な向上を成し遂げ,選択的水素化脱硫触媒を開発・工業化した。プロセス開発は,発熱量の検証や反応シミュレーション開発など詳細な研究・検討に加え,原料CCGを軽質分と重質分に分け,高い硫黄分を含むがオレフィンが比較的少ない重質CCGのみを脱硫することにより,ROK-Finerの開発に成功した。欧米で開発された同目的の競合プロセスは,脱硫部に加え,前処理や後処理反応器を備えているものが多く,複雑かつコスト高のプロセスとなっている。同氏らの開発したROK-Finerは,脱硫反応器一基のシンプルなプロセスでガソリンのサルファーフリー化が達成できるため,高い競争力を有する。

 このCCG選択的脱硫プロセスROK-Finerは国産開発技術であり,(財)石油産業活性化センターの技術開発事業として2004年8月に20,000 BPD規模で実証化を開始し,これまで問題なくサルファーフリーガソリンの製造を行っている。本技術は,国産技術として新規性,独創性に優れた技術である。さらにこれら技術の内,新日本石油(株)の開発した部分は、海外の石油メジャーのCCG脱硫プロセスに特許ライセンスという形で使用されている。このように,本技術は,選択的水素化脱硫の基本技術として高い評価を受けている。さらに,脱硫触媒の機能制御の手法は,他にも応用・展開が期待できる。

 よって,本業績は本会表彰規程第3条2項に該当すると認められる。

 

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