野口記念奨励賞
脱硫機能を有するライトナフサ異性化触媒の開発
渡辺 克哉殿(コスモ石油(株)中央研究所 副主任研究員)
近年,ライトナフサを異性化することによって得られるガソリン基材は,硫黄分,オレフィン,および芳香族を含まないクリーン燃料として注目されている。既存のライトナフサ異性化プロセスは,異性化触媒の耐硫黄性が低いために,ライトナフサを脱硫触媒により水素化脱硫処理して原料中の硫黄分を低減した後に,Pt/固体酸系の触媒で異性化するという二段階の工程が必要であった。
これに対して渡辺氏は,Pt/SO42-/ZrO2-Al2O3触媒に脱硫機能を持つPdをハイブリッド化した新しい耐硫黄性異性化触媒を見出し,水素化脱硫処理を行わずにライトナフサを異性化する技術を開発した。従来では不可能と考えられていた高濃度の硫黄(硫黄>490 massppm)を含有するライトナフサ異性化反応において,本触媒は長寿命で高い脱硫活性および異性化活性を示している。これにより,従来のプロセスでは必須であった水素化脱硫処理工程が不要となり,新しいライトナフサ異性化プロセスの構築が期待できる。
また,Pt/SO42-/ZrO2-Al2O3触媒へのPd成分のハイブリッド化に際しては,バインダーとなるアルミナをPdが選択的に修飾することを確認しており,触媒の耐硫黄性向上の指針となる技術的,学問的に貴重な発見であり,本研究で得られた知見は,耐硫黄性が要求される他の反応系への応用も期待される。
以上のように,渡辺氏は,脱硫機能と異性化機能をハイブリッドさせた耐硫黄性の高いライトナフサ異性化触媒を開発することによって,水素化脱硫工程が不要となる新規なプロセスを実現するための道を開いた。よって,同氏の業績は石油学会野口記念賞表彰規程第2条2項に該当するものと認められる。
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