学会賞(表彰規程第3条1項に該当するもの)[学術的]
ゼオライトおよびメソポーラスモレキュラーシーブの触媒反応と吸着分離における機能制御に関する研究
難波 征太郎殿(帝京科学大学理工学部 教授)
難波氏は,ゼオライトやメソポーラスモレキュラーシーブの細孔径,酸特性などの制御において,新しい手法を確立するとともに,その機能制御により多くの高性能固体酸触媒および吸着剤の開発について先導的な研究を行ってきた。それらの中から特に顕著な成果を選ぶとすれば次の二点が挙げられる。
第一は,ZSM-5や脱アルミモルデナイトのような高シリカゼオライトが水の存在下においても固体酸触媒として機能するというゼオライトの新規機能の発見である。1980年前後はZSM-5の応用が各種検討され,その有用性が高く認識されつつある時期であったが,水溶液中での強い酸性の保持,酸触媒機能の発現を明らかにしたのは同氏の業績であり,後に工業化され日本固有の触媒技術として有名なシクロヘキセンの水和反応触媒開発に決定的な影響を与えている。すなわち,ゼオライトの新規な機能発現について工業化に至る大きな波及効果を持った先導研究を行ったと言える。
第二は触媒,および機能性無機材料として研究・開発が進められているメソポーラスモレキュラーシーブ,特にMCM-41の細孔径の精密制御法である。同氏は,MCM-41の水熱合成に使用されるテンプレートとして二種類以上の長鎖アルキルアンモニウム塩を用いることにより,その平均鎖長によって細孔径を連続的に変化させることができることを発見している。MCM-41等メソポーラスモレキュラーシーブの触媒としての機能は,構造にみあった有用な反応は未だ工業的なレベルでは開発途上であるが,分子量の大きい基質,生成物(高分子等)を対象とした石油精製,石油化学分野への応用可能性が高いと考えられる。また,機能性無機材料としても二次構造制御についてのさらなる検討が必要であるが,高機能発現の支配因子となる一次構造の精密制御法として提案された同氏の手法は汎用性が高い。
以上の二つの業績は顕著である。このほかにも,ゼオライトの形状選択性向上のための数々の手法を提案し,この分野の研究に影響を与えてきた。たとえば,大きな塩基性物質の吸着による外表面酸点の不活性化,迅速に脱アルミニウムすることによる外表面の不活性化などは独創性が高い手法である。さらに,ゼオライト細孔径の微細制御による吸着分離能の向上も達成している。
以上のように難波氏は,ゼオライトおよびメソポーラスモレキュラーシーブの構造制御,機能発現に関する研究において顕著な成果を挙げている。これらの研究成果は,石油精製,石油化学の発展に資するところが多い。よって,本会表彰規程第3条1項に該当するものと認められる。
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