野口記念賞

高分散Co(Ni)-Mo-S触媒による燃料油の超低硫黄化

新日本石油株式会社殿
新日本石油精製株式会社殿

 近年,地球環境改善や地球温暖化対策の観点から,CO2あるいは自動車排気ガス中のNOxやPM(パティキュレート)の排出量削減のための新しい自動車省燃費化技術や自動車排気ガス処理技術が提案されている。これら環境対応自動車の性能を最大限に発揮させるためには,超低硫黄化をはじめとして自動車用燃料油を高品質化することが求められている。このような状況下,新日本石油(株)および新日本石油精製(株)は,触媒開発とシミュレーション技術を組み合わせてパッケージ化された実用性能レベルでの超低硫黄化技術の開発に成功した。

 本技術は,高価な素材や金属分散剤を使用せずに,担体の構成成分や調製方法を見直すことにより,担体の高表面積化を果たすとともに,独自の金属担持方法によって活性金属を高分散化することで活性向上を達成している。触媒担体調製法の特徴は,触媒担体に第三成分を効果的に組み入れることによりシャープな細孔分布を持たせ,高表面積と高細孔容積の両立が達成できている点にある。また,金属担持方法の特徴は,本処方で調製された担体系におけるCo(Ni)/Mo量の最適点が従来の担体とは異なる領域にあることを明らかにし,担体のみを変更した場合よりもさらに活性を向上させている点である。

 従来の硫化物系脱硫触媒では,3〜6層の多層構造をもつ硫化モリブデンに高活性な活性点が含まれていると言われているが,本技術における開発触媒では1〜3層と比較的積層を少なくし,小さなクラスターを極めて高分散にし,数多くのCo(Ni)-Mo-S活性点を形成し,脱硫活性を引き上げると同時に,高い活性を長期間安定的に維持している点に特徴がある。

 また,製油所における脱硫装置は,水素分圧などの運転条件や沸点範囲や硫黄分濃度などの原料油性状が各製油所によって異なる場合が多い。これに対応するために,本技術においては,触媒開発とあわせて反応特性に関する検討を行い,各種条件に対応したシミュレーション技術を構築し,その結果,実際の装置における性能や寿命を予測できるようになり,効率的かつ安定的に運転することを可能にした。

 本技術で開発した触媒は,既に自社以外でも導入されており,1000トン以上の使用実績がある。2004年末の時点においても,軽油脱硫装置7基,灯油脱硫装置11基,間接脱硫装置6基の稼動が予定されており,これらの総処理能力は685,600 B/Dにのぼり,我が国の灯軽油脱硫および間接脱硫装置能力の21%に相当する。さらに,本技術はシミュレーションなどの使用技術とあわせて超低硫黄化技術としてパッケージ化されているものであり,高い普及のポテンシャルを持っているものと期待される。よって,本会野口記念賞表彰規程第2条1項に該当するものと認められる。

 

表彰平成16年度表彰受賞者一覧|ページへ