学会賞(表彰規程第3条2項に該当するもの)[工業的]

新規CoMo系脱硫触媒の開発と超低硫黄軽油生産の実用化

コスモ石油株式会社殿
財団法人石油産業活性化センター殿

 コスモ石油(株)および(財)石油産業活性化センターは近年重要度が増す軽油超深度脱硫触媒の研究を行い,サルファーフリー(10 ppm以下)を達成できる高性能CoMo系脱硫触媒の開発に成功した。開発した触媒は,活性金属と同時にクエン酸とリン酸を担体に含浸した後,焼成せずに乾燥で止めるという新たな処方で調製された。この触媒の脱硫活性は従来の500 ppm対応触媒と比較して,反応速度で約3倍である。また,同触媒の活性点構造を調べた結果,高活性であるCo-Mo-S相の高分散化ならびにMoS2の積層化に成功していることを明らかにした。すなわち,第一にCoとMoを含む水溶液に適量のリン酸を添加し,触媒を焼成せずに乾燥で止めたことにより,予備硫化の過程で活性点の土台となるMoS2層が形成された。第二にクエン酸の添加によりCoがクエン酸コバルト・キレートとして安定化するので,Moが硫化された後にこのキレートが徐々に分解されることになり,MoS2のエッジ部に高分散状態でCo-Mo-S相の形成を導くことが可能となった。このCo-Mo-S相については,島根大学・岡本康昭教授により開発された触媒のキャラクタリゼーション法により,その状態の確認がなされている。また,難脱硫性化合物の立体障害を緩和するために,固体酸としてHYゼオライトを少量添加し酸性質を制御することで,さらなる活性の向上が達成されていることも,本触媒の特徴の一つである。比較のために,最新の軽油超深度脱硫触媒を入手して活性評価を行い,これらの触媒に比べ本開発触媒は格段に活性が高いことを確認している。

 本開発触媒はパイロットプラントによる寿命試験で耐久性が確認された後,コスモ石油(株)の全軽油脱硫装置で使用され,いずれの製油所でも設備増強することなくサルファーフリー軽油の製造が可能になった。この設備増強の回避による投資額の抑制効果は約60億円と見込まれる。さらに,温和な運転条件でサルファーフリー軽油の生産が可能になるため,エネルギー節約による経済的効果も極めて大きい。なお,2004年9月末の商用装置使用実績は約700トンであり,今後の継続使用によりさらに使用量は増加すると見込まれている。また,中東系以外の劣悪な軽油原料の処理に対しても,FCC-LCOと同様に中東系由来の直留軽油と混合処理することで,サルファーフリー軽油の生産が可能である。

 以上のことから,本技術は石油精製に関する独創的な技術開発として顕著な業績であると判断される。よって,本会表彰規程第3条2項に該当するものと認められる。

 

表彰平成16年度表彰受賞者一覧|ページへ